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お隣の留学生 「感じる、日本人の二面性」

英米語学科学生新聞「拓大生を一度洗濯いたし申し候新聞」より転載)

香港留学生 謝雪琳(シャー・スーラン)さん(大学院言語教育学専攻科2年)

拓大は、留学生が多い大学として知られている。しかし、日常、日本人学生と彼らが接する場面はそれほど多くない。留学生について我々日本人学生は知らな過ぎるのではないか。
国境を超えずとも出会うことができる外国、異文化、それが留学生である。

「或る日本を抱えて」

日本の古い物が好きと謝さん、源氏物語や黒澤映画が好きだそうだ(撮影: 伊藤瞬)

日本の古い物が好きと謝さん、源氏物語や黒澤映画が好きだそうだ(撮影: 伊藤瞬)

留学生、と耳にする際、殆どの人達が、その実態に興味を持つのではないか。何故日本に来たのか。日々、何を考えているのか。そして、これから日本で何をするつもりなのか。今回、インタビューさせて頂いた、謝雪琳さんは、香港からの留学生だ。

「とにかく仕事が辞めたかった」と、謝さんは語る。謝さんは元々、香港にて会計監査官の仕事をしていた。香港の大学を卒業し、職務をまっとうしていたのだが、その業務は全く面白くなかったそうだ。

日々、不満を抱えながら労働しているうちに、「やりたい事がやりたい」という思いが芽生える。そんなさなか、或る友人の話を聞く。「仕事を続けながら、修練し、ピアノの先生になる」それは謝さんにとって、衝撃的だった。現状改革の願望は切実であるが、現在の安定を崩す勇気はなかったのだ。

友人の決意が後押しになり、謝さんの願望は熱烈になっていった。そして、実務三年目にして、香港の日本語学校へ。翌一年間、仕事と学校の両立を経て、ついに一念発起。日本へやってきた。

現在、謝さんは拓殖大学大学院言語教育学専攻科にて、「日本語の先生になりたい」という思いと共に、日本語教育学を学んでいる。謝さんの「やりたい事」は、日本に在ったのだ。とは言えども、日本への熱意は、一体どこから沸いて来たのだろう。それは、香港というお国柄がおおいに関連する。

香港に於いて、日本の文化はごく身近にあるそうだ。ファッション、食、アニメ、他にも様々な物が氾濫しており、ことアニメに関しては、「クレヨンシンちゃん」「ドラゴンボール」「ちびまる子ちゃん」など、日本でお馴染みの番組が放映されているという。

謝さんは、そんな身近に存在する日本に、潜在的な興味を持っていた。最初こそ先述のアニメ、ファッションなどであったが、年を重ねるにつれ、日本の小説にも興味が広がり、例えば、太宰治の「人間失格」などは、謝さんが抱く日本人感をおおいに育てた。

おとなしく、控えめな日本人は、文章の世界では自身の思いをありのままに吐露する。その様は謝さんに、「日本人は極端だ」という印象を与えた。日本人には強い二面性があり、例えば日本のバラエティ番組を見ていると、喧しい芸人がいる一方、寡黙な俳優がおり、全く以って、極端に感ずるそうだ。

元々、「古い物が好き」という謝さんは、太宰治の時代から、現代まで変わらずに流れる裏表の激しい、日本人の文化に惹かれ続け、今では日本の古い文化、つまり、古典文学や映画に眼差しが向けられている。源氏物語、黒澤明の映画、変わった物として、こけし。

年来、日本にはしばしば訪問していたらしく、留学生活にさほど難は感じないらしい。然しただ一つ、猛烈に体裁が悪い事があり、それは、自身の名を名乗る時だと言う。

香港に於いての主要言語は英語であり、初対面の際、本名、つまり漢字名は伏せ、英語名を名乗る。それからは暫く英語名でやりとりし、時を経て、相手との交流を深め完全な信頼関係を築いた後、やっと漢字名を知らせる。日本ではその様な習慣は皆無であり、謝さんは英語名を封印する事を余儀なくされ、羞恥にさらされながら漢字名を伝えるそうだ。

そんな文化の違いを微笑ましく語ってくれた謝さんではあるが、実の所、もう一つ難儀があるという。それは、将来だ。「日本語教師になる」とは語りながらも、就職難を抱える現日本。そう簡単に事は進む筈なく、香港に帰国せざるを得ない可能性もある。かといって易々と帰国し、元の会計監査官に戻るなど、絶対に避けたい。是が非でも日本に残り、教師の為の勉学を続けたく、又、語学研究にも没頭していたい。

謝さんは向後、何処に行き着くのか。不明瞭な先行きではあるが、望む道を進むには、確固たる意志を要する。日本への熱烈な思いを絶やす事無く、又、更に発展させていく事だ。謝さんの中に現存する日本像は、どの様な発展を果たして行くのだろうか。

(インタビュー、写真、英米語学科4年伊藤瞬)

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