日本人の学生としてスペインの大学で日本語教師を実践
茨木沙理さん(スペイン語学科4年 都立松が谷高校出身)
留学を諦めて就職活動をしようと思っていた矢先、スペイン語学科の先生からスペインのサラマンカ大学で日本語教師アシスタントを募集しているとのお話をいただきました。
拓殖大学としても今年が初めての試みなので情報が少なく、会話のアシスタントと聞いていたのでスペイン人の先生の横で会話練習を手伝うのだと想像していました。しかし実際には2クラスを私が1人で担当する事になっていました。想像してみて下さい、人生で初めての授業をスペイン人の大学生を相手にするのです。

日本語クラスの学生と日本料理店にて
サラマンカの学生は努力家で頭脳明晰です。日本の感覚では、分からない学生にテンポを合わせてしまうのでゆっくり教えがちです。
サラマンカ大学の授業を受けてみると分かりますが、スペイン人の先生は待たずにさっさと進めてしまいます。
授業を始めた頃は日本人の友達に見学をしてもらって感想を聞きました。ここの学生は速い授業に慣れているから、もっと速く進めて良いと言われました。
私もそう感じていたので、1度目の授業の3倍の容量で次からは教えました。サラマンカの学生にはこれが丁度良いようです。
2クラスの内、レベル3クラスは既に1年間日本語を勉強した生徒です。かなり文法を理解しているので、鋭い質問などをされて戸惑ってしまう事もあります。
レベル1クラスは全くの初心者なので平仮名から教えました。学生は必ず家で勉強をしてくるので、すぐに習得していました。
授業には中国や欧米からの学生もいます。中国語圏の学生にとっては、漢字は簡単でも平仮名の発音を覚えるのが大変だそうです。中国語にはピンインという日本のローマ字のような発音表記体系があります。
例えば「ぶ」の発音をローマ字表記にすると「bu」ですが、中国語の漢字では「不」となりピンインでは「ぷ」と発音されるので混乱してしまいます。そこでピンインではなくて、スペイン語でバスという意味の「autobus」の「ブ」と覚えて!と説明すると理解してもらえました。第二外国語で習得した中国語を活かす事ができ、中国語圏の学生に分かり易いと喜んでもらえました。
スペインで日本語を教え始めて半年が経ち、授業で学生の前に立つ事にも少しずつ慣れてきました。教える側としては学生に理解されないのが一番心配なので、何度も確認しながら進めています。
テンポは速いですが、分かっていない学生が居れば終わってからもう一度説明をします。文法だけでは学生の集中力が下がってしまうので、最近は途中で折り紙の時間を織り交ぜながら楽しく授業をしています。学生の集中力も上がり、日本の文化も教える事ができるので一石二鳥だと思っています。
学生は同じ名前や似た苗字が多いので、最初はなかなか覚えられませんでした。そこで拓大のロメロ先生が日本の学生にスペイン語の名前を付けるように、私も学生に日本語の名前を考えました。
漫画やアニメが好きな学生には登場人物の名前を、他の学生には好きな色や花を日本語に訳して命名しました。この時に学生全員と日本の文化や興味のある事について話したので、学生との心の距離が近くなりました。
そして学生からクラスで日本料理を食べに行こうよ!と提案されました。私と学生は年齢が近いので授業以外では先生ではなくて普通の友達になれます。それから私が拓殖大学OBの佐藤さんの日本料理店「肴」に連絡をして、学生と食べに行く事になりました。初めて寿司や刺身を食べる学生もいましたがどの料理も美味しいと驚きながら完食していました。
会話アシスタントではなくて、日本語教育について無知の私が文法を教えるという現実に悩んだ時期もありました。今でも現役大学生である私に務まっているのかと不安です。
高校生の頃のアルゼンチン留学では、日本語を忘れてスペイン語の学習に没頭していました。今回は目的が違うので、日本語に向き合いながらスペイン語を使うという新しい体験ができました。
私は人に何かを教えるのは苦手だと思っていましたが、日本語を教えるのが好きになりました。まだまだ知識不足なのでこれから勉強をして日本語教師を目指したいと思っています。ここでの経験は私の人生に新しい道を切り拓いてくれました。
推薦してくださった先生方と、支えてくれた家族に心から感謝の気持ちでいっぱいです。あと残り3ヶ月で更に成長できるように頑張ります。ありがとうございました。
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