Gracias:スペインの魅力を教えてくれたサッカー選手のあなたに
清水友美さん
優しくて、料理の腕が抜群で、すごくおしゃれだったホストマザーのマリア。スペイン語を通じて出会った多くの仲間たちや、先生たち。私のスペイン留学は素敵な出会いの連続でした。
そんなスペインの魅力に目を開かせてくれたのがあなたでした。私がスペイン語学科に入ることを決意したのも、スペイン語を好きになったのも、そして、スペインサッカーに魅せられたのも、あなたの存在抜きに語ることはできません。
きっかけがサッカーという人は、スペイン語を学んでいる人には数多く存在すると思います。私もそんな一人でした。サッカーのために留学したわけではないのですが、本場の試合をこの目で見て、あこがれの選手のあなたに会いたいという思いは日増しに強まっていきました。
そして、とうとうある日、私は決意しました。あなたに会いに、スペインの南、アンダルシアへ旅立つことを。練習時間を確認し、小さなホテルを飛び出し、タクシーに乗り込みました。窓から見える街の景色は、改めて異国にいることに気づかせてくれます。アラジンの舞台のようなイスラム風の豪華な家、太陽をまっすぐに浴びて光り輝く白い家並み。ヤシの木の下で話す親子。まだ夏が残る匂い。そんな景色を眺めているうちに、ついに練習場へ着きました。
私は震えました。そこにあなたがいたからです。気軽にサインに応じてくれ、一緒に写真までとらせてくれましたね。テレビや写真で見ると、すごく小さい選手なのに、肩に手を回して写真を撮らせてもらった時、あなたの身体があまりに固いのにびっくりしました。どんなに小さく見えても、これがスペインリーグの選手の身体なんだ、と感動しました。そして、ずっと会いたかった選手がこうして目の前にいること、私が日本から海を飛び越え、大陸も越え、こうして会いにやってきて、ついに望みが叶ったこと、何もかもが一瞬の事で、本当に、夢を見ているようでした。
だから、最後にあなたに言いました。
“Gracias.(ありがとう)”
練習前の忙しさにもかかわらず快くサインや写真に応じてくれたこと、そして、何よりも、私をはるばるこの地まで来させる力と勇気を与えてくれたことに対する心からの感謝の言葉でした。
帰り際に、チームのオフィシャルショップで、あなたのネームと背番号入りのユニフォームを買いました。
サラマンカに戻ると、私のおみやげ話を楽しみにしていたホームステイ先のおばあちゃんがおいしい料理を用意して待っていてくれました。「ここはあなたの家だから」といつも言われてましたが、いつの間にか、帰ってくると本当にホッとする私の家になっていました。
ホストマザーのマリアは、ユニフォームを見て、よかったわね、と笑いながら私の話をゆっくり聞いてくれました。アンダルシアの道端で出会った陽気なおじさんたちのこと、サッカーの試合中に大声を張り上げて選手を罵倒するおばあちゃんのこと、試合を見た帰りのバスの中で歌をうたったり、運転手とけんかをする子供たちのこと、おいしいアンダルシア料理で幸せになったこと等、旅で経験したこと全てを一気に話したものでした。
この旅は、スペイン語を学びたいという気持ち、力を伸ばしたいという思いが今頂点にあると実感した機会でもありました。そして、その思いは、さらに越えられることもあれば、時には下降することがあっても、また次の頂点に向かって上昇するのだということが、この八ヶ月間のスペイン留学を通して強く感じられました。
留学中、スペイン語上達に対する私の強い思いの原動力となったのがホームステイ先の家族とのこのような交わりの数々でした。ホームステイ先をいい意味で本当に自分の家にしてしまうことが何よりも大切なのだと思います。日々の様々な体験や、旅の思い出等を家族と共有するため語り合った日々は今でも私の最高の思い出になっています。
■写真
(上) サラマンカのプラサマヨール広場は人々の社交の場です
(下) ホームステイのおばあちゃんといっしょに