星の巡礼路を歩いて得たもの
前田 知洋 さん
「うわー、なんて、きれいな星なんだろ!!!!!!!」
まだ、太陽が昇る前の夜空には、一面に星が広がっており、その中の月の光も、僕たちの影を、はっきりと映し出していた。僕たちは、Santiago de
Compostela(サンティアゴ・デ・コンポステラ)へ向かう道の上を歩いていた。
「この夏は、Santiagoの巡礼路を歩くぞ!」
スペイン語学科へ入学し一年生の頃、オスカル・メンドーサ先生は、授業で「el camino de Santiago de Compostela」(サンティアゴ・デ・コンポステ
ラの巡礼路)のビデオを見せてくれた。その時から、僕は、「いつか歩きに行くぞ!」と心の片隅に思っていた。
一年前の弟は、起きてから眠るまで勉強の日々の浪人生。「来年の夏は、大学一年のはずだから、絶対に一緒に行こうな。」僕と弟は、約束していた。
そして、2008年8月6日、僕たちは、成田空港からスペインのBarcelona(バルセロナ)へ飛んだ。正直、僕は、不安でたまらなかった。まず、バルセロナという
大都市での治安と、そこから巡礼路まで無事に行くことができるのか?毎日、僕の胸は、バクバクだった。お互い、観光もかねていたので「楽しい時間を過ごそう
ぜ!」と、意気込んでいたものの、僕は、スペイン語がわからない弟を、守らなきゃいけない気持と、サンティアゴまで行って無事に日本に帰るという、大きな使命
を感じていた。
バルセロナで2日間、観光し、そこからバスでZaragoza(サラゴサ)へバスで移動、世界万博に足を運んだ。日本の作品は、見学したのだけれど、その時あま
りにも、お腹が空いていて、スペインとメキシコの作品を観ることを、すっかりと忘れてしまった。駅で一泊したのちJaca(ハカ)に電車で入った。そこから本格的な
巡礼がスタートした。
オスカル先生から貰った巡礼の地図を片手に、1日最低でも20キロ、多い時は45キロ歩いた。朝は5時半に起きて13時頃まで歩く。その時間帯を逃すと、
真夏の太陽が、矢のごとく僕たちの肌に突き刺さって来た。
歩き始めて驚いたことは、巡礼路には、巡礼者たちをサンティアゴまで導くための「→」(矢印)がいたる所に書かれている。家の壁、石、木、電柱などなど、、
、。「あった、あった、こっちだよ、こっち。」僕より、何倍も目のいい弟は、いつも僕を助けてくれた。一時間、5キロのペースで歩き、二時間ごとに休憩。前日にス
ーパーで買っておいた、フランスパンと果物(りんごや桃、バナナ)を、ゆっくりと水と一緒に食べる。「う!うまい!」疲れて腹ペコの僕たちには、世界で一番美味し
いご馳走だった。もちろん、山の上からの眺めも最高の調味料として、僕たちの胃袋を満たしてくれた。
お昼ご飯前には、新しい街に着きAlbergue(アルベルゲ)という、巡礼者専用の宿屋を探す。お値段は、安ければ無料、高くても10ユーロという破格の安さ
。夕食と朝食が付いてくる所まであった。大きな部屋に二段ベッドがいくつも並び、先着順に場所を選べる。朝一番に歩き始めていた僕たちは、ほとんど毎日
一番乗りでベッドを確保していた。僕たち学生にとっては、心の底から喜び会う日々であった。
アルベルゲでは、世界中の人々と出会うことができた。意外とバルセロナやバレンシアから来ているスペイン人が多くを占めていた。他には、イタリア人やフランス
人も多く、前期で勉強し始めたフランス語が通じた時は、嬉しかった。

巡礼路を歩いていると、「ここは動物園か?」と思えるほど沢山の動物達に会うことができる。ある日、山と岩と坂ばかりの道を歩いていると、右から左へ、もの
凄いスピードで走りぬける何かを見た。「うさぎだ!うさぎ!あんなに早く走るのかよ!」僕たちは、目を見合わせてしまった。その他にも、馬、牛、山羊に羊。もち
ろん犬や猫も、僕たちを応援(?)してくれた。
Logrono(ログローニョ)まで約200キロ、一週間ほど歩き、そこから友達のダニエル君(本校のスペイン人交換留学生)に会うためにLaredo(ラレド)へ、バス
で向かった。せっかくなので、San Sebastian(サン・セバスチャン)やBilbao(ビルバオ)にも足を運んだ。3日間、ダニエル君の家に滞在したのち一気にゴールか
ら残り約100キロ近くに位置するLugo(ルーゴ)まで、進んだ。巡礼の道では、100キロ以上歩いた者には、compostelano(コンポステラーノ)という証明書が
貰える。帰国の飛行機の日にちを決めていたので、余裕を持って計画を立てた。
そして、2008年8月28日、僕たちは、Santiagoの地に到着した。一年間、365日行われている巡礼者を迎えるミサで、教会の中を、行ったり来たりする、
botafumeiro(ボタフメイロ)を目の前にすることができた。帰りは、Salamanca(サラマンカ)により、マドリードの空港で二晩、野宿をしたのち無事に日本に戻
ることができた。
弟は、言っていた。「スペイン語学科の学生も歩くべきだよ。こんなにきれいな景色を見られて、美味しい物を食べられて、ネイティブスピーカーズと毎日スペイン
語。宿泊代も安いしね。(笑)巡礼留学とかあればいいのにね。(笑)」
僕も、そう思う。今回は、全行程を歩いた訳ではないけれど、サンティアゴの道が僕たちに与えてくれた物は、お金では、買えないものばかりだった。
「自分で挑戦する力」「ベストをつくすこと」「生きたスペイン語」「他人を思いやること」ここには、書ききれない。
サンティアゴのミサで司祭様が言っていた言葉は、巡礼をした物だけが理解できると思うので、今回は、秘密です。(笑)
知りたい人は、是非、歩いてみてください。自分が考えている以上のものを得ることができることを約束します!
!Bien camino!(良き道を!)
写真(上)道中、巡礼手帳に公式のスタンプが押され、これが巡礼の証明に
写真(下)巡礼の道標