就職活動を前に悩むあなたに
伊本 慧さん
大学生の就活マニュアルは数え切れないほどありますが、ちょっと毛色の違う本を読んだのでご紹介します。「就職迷子の若者たち」(小島 貴子:集英社新書)という本で、ゼミの先生に勧められたものです。一般のマニュアル本と違い、就職活動で直面する悩みの実例が豊富で、対処法や考え方に重点が置かれています。これは著者がキャリアカウンセラーで、多くの学生にアドバイスを与えてきた経験が活かされているからです。
「就職迷子の若者たち」を読んで、最も印象に残った三つの箇所について考えたことを、自分の就活体験と照らし合わせながら述べたいと思います。
第一章からは、「会社を探すより仕事を探そう」、そして第二章からは「相手が何を知りたがっているのか、を理解する」「外的報酬だけで、働き続けられるのか」というトピックです。
「会社を探すより仕事を探そう」
この言葉を聞けば、就職活動を一度でもしたことのある人は誰でも「自分はどうだったかなぁ」と振り返らずにはいられないと思います。もちろん、私もその一人です。
この本を読み始めた時は、既に就職活動を始めて数ヶ月が経ち、最終面接も何社かで受けている状況でした。大学に入った頃からぼんやりと旅行関係の仕事を志していた私ですが、それでも就職活動にはとてもプレッシャーを感じていました。旅行業界は人気があると色々な人から聞かされていたので、自分が本当にその職業に就けるかどうか自信がなかったからです。また、両親とも企業に属していないこともあり、会社という組織自体がどんなものか、職種や業界にはどのようなものがあるのか、わかりもしませんでした。つまり、私や私の家族にとって企業相手の就職活動は始めてのことでした。
そんな私は、旅行会社以外にも志望企業を広げるため、必死に就職情報サイトで会社を探しました。今思えば、これが間違っていたのです。企業名から探してエントリーした会社は、本当にほぼ全滅でした。何もかもわかって選考に進んでいるつもりでも、最終面接でその会社や業界の仕事内容について全く無知だったと思い知らされたこともありました。
そうして結局最後に残ったのは、就活を始めた頃からまめにチェックしていた会社だけでした。もちろんどれも、事業内容や将来自分がやりたい仕事について、はっきりとしたイメージを持てていた企業です。幸い、自分には最初からやりたいことがあったのでいくつかの会社で内定をもらうことができましたが、もし何の仕事がしたいか少しも決めていなかったら・・・いったいどうなっていたのでしょうか。就職サイトで会社を探し、名前に聞き覚えがある企業ばかりを受験して落ちる、実の無い就活を繰り返していたのでしょうか。考えると、ぞっとします。
「相手が何を知りたがっているのか、を理解する」
このフレーズは、私にとって一番の薬になる言葉だと思います。なぜなら、私は口数が多く、いつも回りくどく話しすぎてしまう傾向があるからです。
「では、3分間で簡単な自己紹介をしてください。」これは面接で、常にと言ってもいいほどよく訊かれた質問です。しかし、私はこの質問が一番苦手でした。自分の名前以外のことで相手が一体何を知りたいか、想像しにくいからです。しかも時間が制限されているので、長すぎず短すぎず、望まれている長さで話さなければなりません。私はその時まで、「人と関わることが好き・社交的=コミュニケーション能力がある」ということだと思っていましたが、必ずしもそうではないということを痛感しました。現に、グループ面接などで他人の持ち時間を気にせず話し続けてしまう人は、いくら話の内容が良くても周囲の人の気持ちや場の空気が読み取れていない鈍感な人に見えてしまいます。そして自分もそうなる危険性があったので、端的にポイントを絞って話せるよう常に気を配っていなければなりませんでした。
著者・小島さんが言及しているように、面接で試されるコミュニケーション能力は、実際に社会に出て働いてからも必要とされる能力です。特に、主な仕事内容が接客である私の内定先では必須です。常に相手の考えを予想しながら行動できるよう、普段から気をつけるようにしたいと思います。
「外的報酬だけで、働き続けられるのか」
この問題について、文中にある外的報酬と内的報酬のバランスが大切だという考えに、私も心の底から同意します。
こんなことがありました。私は高校時代、パン屋さんで二年間アルバイトをしていました。時給はそれほど高くなかったのですが、そこで働くことにとても満足していました。特に好きだったのは社長の気さくな人柄です。その人がいるだけでお店全体が明るくなっているように見えました。そこで初めて、出勤時の挨拶はいつでも「おはようございます」だということや、電話の取り次ぎ方を教わり、自分でもどうやったらスムーズに仕事ができるか考えながら働きました。初めてのアルバイトでしたが、本当にたくさんのことを学びました。
そうして飲食店での接客が気に入ったので、その後大学に入学するとある飲食チェーン店でアルバイトを始めました。しかし、会社の強制する無理な就業時間のせいで社員さんは過労気味、職場の雰囲気も悪く、給料が高いとはいえストレスばかりが溜まってしまいました。そうなるとやはり、ずっと働き続けることはできなくなります。
何を外的報酬/内的報酬と考えるかは本当に自分次第だと思いますが、誰にとっても、自分にプラスになったり、居心地がよかったりという内的報酬は不可欠だと思います。私も外的報酬については最低限生活していけるだけの給料があればいいと考えているので、やはり内的報酬を重視しているといえます。高校時代、パン屋さんにいた時の私は、お小遣いをもらいながら社会勉強をしている、という気分でした。報酬以上に仕事の中身に惹かれていたためでしょう。学生のアルバイトとこれからなる正社員とでは立場も責任も違いますが、見てくれや外的報酬に騙されず、自分のためになることは何かを見失わないように心がけたいと思います。
以上のことは全て、私たちのようにこれから就職する若い世代の人たちに向けて書かれたメッセージでしたが、仕事を持ってからもどうやって生きていくか考えるきっかけになりそうです。この本には、仕事とは何か、どうやって仕事と向き合えばよいかというヒントがたくさん詰まっています。この本を読んで就職活動を反省するだけではなく、今後の働き方や考え方に活かして、上手に仕事と付き合っていきたいと思います。