平成29年度 拓殖大学学長 卒業式告辞

平成30年3月23日
拓殖大学学長 川名 明夫

本日ここにめでたく拓殖大学を卒業されることとなった皆さん、本当におめでとうございます。また、ご臨席の保護者の皆様、並びに関係者の方々には心からお祝い申し上げます。

皆さんにとってこの4年間はどのようなものであったのでしょうか? 今年、商学部、政経学部を卒業する皆さんは、入学して1年間だけ、この八王子国際キャンパスで学び、2年生からは教室、設備も新しくなった文京キャンパスで学ぶという事で、少々慌ただしい学生生活であったかもしれません。また外国語学部、国際学部、工学部の皆さんにとっては、今まで2年間ですが同じキャンパスで一緒に学んでいた商、政経学部の皆さんが文京キャンパスに移ってしまい、少々寂しい思いをしたかもしれません。

本学にとって、皆さんが在学したこの4年間は、新生拓殖大学に向かって着実にその一歩を踏み出し始めた時代でなかったかと思います。皆さんが入学した翌年には本学の創立120周年、そして東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて教育改革を進める「拓殖大学教育ルネサンス2020グランドデザイン」を策定しました。そして、この3年間に渡りに多くの教育改革を行ってきました。この改革における人材育成の目標は「国際的視野に立って、国内外の人々と協働して積極的に課題の発見と解決にチャレンジしていくタフな人間力を身につけたグローバル人材即ち拓殖人材の育成」であり、このような教育目標の下で学び、本日ここに拓殖大学を巣立っていく皆さんは、立派な拓殖人材として社会で活躍して頂けるものと信じています。

皆さんを待ち受けている現在の日本の社会は、大きな転換期に立たされています。グローバル化・多極化による国際社会における我が国の存在感の低下、少子高齢化社会を向かえ、生産活動の中核となるべき生産年齢人口の激減、など、多くの要因が日本の未来を不透明なものとしています。それに加えて、急速な技術革新が未来の予測を更に困難なものとしています。

AI、人工知能、IoT、モノとモノのネットワーク、そしてロボット技術が融合し、私たちがこれまでに経験したことのない大きな変革を引き起こそうとしています。これが第4次産業革命と呼ばれるものであり、単に製造業における生産性の向上といっただけではなく、販売、消費と言った経済活動に加え、健康、医療、公共サービスなどの幅広い分野や、人々の働き方、ライフスタイルにまで影響を与えると考えられています。このような、第4次産業革命の進展により、皆さんがこれから働く職場環境は大きく変化すると考えられます。今でも近代的な製造工程を持つ工場では殆ど人の影を見ることはありません。多くの仕事は自動化され、これらの自動化された機械が正常に動いているかをチェックする人がいるだけです。近い将来には、これらの機械の状態もAIが監視し、予め故障を予測し、故障が起こって製造ラインが止まることがないよう、部品を交換することもできるようになると思います。

これに比べて、いわゆるホワイトカラーが働く職場では、これまでそれほど大きな変化は見られませんでした。しかし最近では、銀行における案内業務、融資業務や保険会社における審査業務にもAIが導入され、証券会社等における株式トレーダーもAIに取って代わられようとしています。これまで、技術の革新によりその職場がなくなる例はよくありました。私の学生時代には、鉄道の駅には切符を売る駅員、切符切りの駅員等、駅にはたくさんの駅員がいました。しかし、今ではすっかり切符自動券売機、自動改札機に置き換わり、目にする駅員の数はすっかり減ってしまいました。

このように、これまでも技術の革新により職場がなくなることはあったのですが、多くの人が職を失い社会問題にまでなることはありませんでした。今回の第4次産業革命と呼ばれるような技術の革新は、これまでとは、その変化の速度と規模において大きな違いがあるように思われます。製造、流通、金融、マーケティング等あらゆる分野にその影響が急速に表れるのではないかと思います。従って、これから社会に巣立っていく皆さんは、必ずどこかでこの影響を受けるはずです。是非このような変化が起こるであろうことを心にとめ、その備えをしておいてほしいと思います。AI、IoT、ロボットが融合することにより、あらゆることができるようになるわけではありません。「何をさせるのか」は人間が考えなくてはなりません。「何をさせたらよいか」を考える基準は、「誰のために」「何のために」であり、本学の人材育成の目標にあるように世界的視野に立ち、周りの人々のことを考え、AIやロボットに「何をさせるか」を考えることが重要だと思います。

皆さんが学んだ拓殖大学は「国際大学」を標榜して百十余年の歴史を刻み、国際大学のパイオニアとして、世界各地で活躍する数多くの卒業生を世に送り出してきました。このような先輩が培った、どのような状況にあっても困難に立ち向かい、それを克服する力と、強靭な精神力は今日まで、本学の伝統として脈々として引き継がれています。拓殖大学で4年間学んだ皆さんにもこの血は流れているはずです。これから社会に出ていくと先ほど申し上げたような多くの困難が待ち受けていることと思いますが、本学で学んだことに誇りと自信を持ち、あらゆる難局にも立ち向かっていってください。

グローバル化が進み、AIやIoTそしてロボットの技術が進展し、社会全体が大きく変化しその未来を予測することが困難な時代には、多様な人々と協力しながら主体性をもって自らの人生を切り開いていくことができるようなタフな人間力が必要です。

皆さんは、この4年間、拓殖大学でいわゆる学問を学んだだけではなく、課外活動やボランティア活動などを通して多くの先輩、友人と共に活動し、タフな人間力を身につけたことと思います。拓殖大学で学んだことに自信と誇りを持ち、この予測不可能と言われている未来に向かって自らの道を切り開いていってほしいと思います。
皆さんのこれからの活躍を期待し私の告辞といたします。