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グローバルファシリテーター育成塾〜岩手フィールドワークに行ってきました!

掲載日:2015年07月16日

7月3日(金)〜5日(日)の2泊3日で、塾生たちは岩手フィールドワークをしました。岩手にこだわった理由は、塾の冠ともなっている新渡戸稲造の出身地が岩手県盛岡市だからです。

これまで、ビジネス分野、教育分野、国際協力分野で活躍するファシリテーターの話を伺ってきましたが、わざわざフィールドワークに出かけたというのは、地域/コミュニティにおけるファシリテーターと出会うというのが目的です。最近、地域創生が声高に叫ばれたり、コミュニティ・デザインという分野が注目されたりしていますが、そうした中でファシリテーターがどう貢献できているのか、その実際を見て、感じてこようというわけです。

塾生たち一行は金曜日の夜に池袋を発ち、一路、高速バスで岩手県大槌町に向かいました。3.11の際、町役場が津波の被害に遭い、町長をはじめとする多くの役場職員を失い、行政機能が停滞してしまったことで有名になった町です。
 その状況で多くの支援が集まり、さまざまな団体によって復興支援が行われていきましたが、そのひとつとして一般社団法人「おらが大槌夢広場」があります。

※参考:おらが大槌夢広場ホームページ http://www.oraga-otsuchi.jp/


グローバルファシリテーター育成塾〜岩手フィールドワーク

まずは、大槌町出身の語り部ガイド・東梅和貴さんから震災当日から今まで町がどう変化してきたか、現在、どんな問題を抱えているかといった話を聞かせてもらいました。塾生たちとほぼ同年代である彼の語り口が、非常に思いのこもったもので、何度も塾生たちに深く問いかけていくスタイルに「これもファシリテーションだよな」と感じ入っていました。

 

グローバルファシリテーター育成塾〜岩手フィールドワーク

被災した町の様子を一通り観た後、事務局長である神谷未生氏の話を伺いました。彼女は、もとはと言えば保健医療の分野で海外援助に携わって、世界各地を飛び回っていた方です。大槌町出身でもない彼女が、なぜ小さなコミュニティに腰を下ろして新たな活動を展開していったのかということに塾生たちは興味津々でした。それに対する彼女の答えは、「人と向きあう」「自分と向きあう」という点ではどこで活動しようと一緒で、最終的には自分の中にあるしがらみから自由になれたからだと話されていました。
 人ときちんと向きあうという原点を再確認した神谷氏が、地域で活動する際に留意しているのは、「人の表情や声、目線を感じる・聴く」ということです。これは、まさに"場をみる"というファシリテーションスキルのひとつにあたります。

 

グローバルファシリテーター育成塾〜岩手フィールドワーク

次に訪れたのは、NPO法人吉里吉里国です。
 ※参考:NPO法人吉里吉里国ホームページ http://kirikirikoku.main.jp/

主に漁業で成り立っていた大槌ですが、東日本大震災で甚大な被害を被ってもなにも変わらなかったのが森林です。その自然資源の可能性を新たに見出し、森林整備をし、薪にして販売するという活動を吉里吉里国は行っています。  塾生たちは、汗だくになりながら、たっぷり2時間、薪割り体験をさせてもらいました。こうして薪割りができるということは、40〜50年前に汗して育んできた先人たちの恩を受けて生きているのだということであり、今度は自分たちがその「恩の送り主」になっていくのだということを体験後に理事長の芳賀正彦氏から伺いました。また、森林資源の有効活用が、実は海の再生にもつながっているというのもこうした活動の背景にあると気づかされました。

 

グローバルファシリテーター育成塾〜岩手フィールドワーク

翌日は、電車で盛岡まで移動し、新渡戸基金の事務局長・藤井茂氏と一緒に盛岡市内を歩き、新渡戸稲造ゆかりの地をいくつも訪れました。藤井氏の新渡戸に関する豊富な知識には本当に驚かされるばかりでしたが、それを時折ジョークを交えながら気さくに話してくれるものですから、塾生たちは楽しく、新渡戸の生い立ちを追うことができました。
 藤井氏が話してくださったエピソードのひとつに、新渡戸の講義の仕方についてのものがありましたが、彼はただただ結果(知識)だけを伝えるのではなく、彼の経験に基づいて、その調べ方、覚え方を話したと言います。単に教え諭すだけでは人は育たないということに気づいていて、新渡戸たちが日本の大学にゼミを導入していったという話も頷けるものです。

 

グローバルファシリテーター育成塾〜岩手フィールドワーク

岩手フィールドワークの最後は、盛岡市先人記念館の訪問でした。ここで新渡戸稲造の成し遂げてきたものを改めてみんなで確認しました。

実質2日間のフィールドワークでしたが、かなり濃密な時間を過ごすことができ、塾生たちはまたひとつ成長したように思います。ここでの深い学びをファシリテーターとしての実践にきっとつなげていってくれることでしょう。