『多元的行政の憲法理論-ドイツにおける行政の民主的正当化論』 高橋雅人(拓殖大学政経学部准教授)著(平成28出版助成) | 大学 | ニュース一覧 | 拓殖大学

『多元的行政の憲法理論-ドイツにおける行政の民主的正当化論』 高橋雅人(拓殖大学政経学部准教授)著(平成28出版助成)

掲載日:2017年02月22日

多元的行政の憲法理論-ドイツにおける行政の民主的正当化論

放置車両確認機関や建築確認の指定確認検査機関など、従来、国家任務とされてきたことが、私人に委託され、 または、原子力発電所の設置稼動の許可処分の際に、安全審査を専門家が行うように、今日では、国家任務の内容と、 その任務を行う主体が多様化しています。

本来、国家作用は、法治国家原理・民主主義原理のもと、すべて、何らかの法の規律に服していなければなりません。 ところが、国家任務が私人との協働で遂行されていくと、その任務遂行が法治国家原理・民主主義原理から逸脱しはしないだろうか、 という法としての根源的な問題が出てくるのです。

そこで、このような国家任務と私人との「公私協働」を、法的に規律する枠組みを理論化する必要があるのです。 それは、私人が国家行政に関わる「参加」の局面(市民参加、デモ、行政手続の参加など)、 国家任務を私人に委託する「民営化」の局面、行政決定の主要な理由を専門家委員会に委ねる行政の「独立化」の局面など、 多元化した行政作用を規律する理論枠組みです。その枠組みがなければ、国家は、自身の任務内容・財源・責任について、重くなった肩の荷をどんどんと下ろしてしまわないでしょうか。 本書では、国家の統治・行政(作用・組織)には民主的正当化を要するとの前提のうえで、 民営化や独立行政機関などについての民主的正当化をいかに考慮するかを考察しています。

どのように正当化できるのかについて、憲法理論から一定の方針がたてられる、と仮説をたてて、その論証を試みています。 この理論的試みは、この分野で先駆的かつ重厚な研究を蓄積しているドイツの公法学を参照していますが、本書は、 そのドイツの法理論の理論的背景や実践を批判的に考察することで、以上の課題に応える試みをしています。 多元化する現代行政の法的規律について、議論の活性化の一助となれば幸いです。

出版社

法律文化社

発行日

2017年2月28日

著者

高橋雅人
拓殖大学政経学部准教授。早稲田大学法学部助手を経て現職。早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程修了。
博士(法学)(早稲田大学)。専門分野は、公法学(憲法・行政法)。
主な著書に、『法創造の比較法学』(日本評論社、2010年、共著)、『立憲的ダイナミズム』(岩波書店、2014年、共著)等がある。