『共有資源管理利用の法制度』 奥田進一(政経学部教授)著 | 大学 | ニュース一覧 | 拓殖大学

『共有資源管理利用の法制度』 奥田進一(政経学部教授)著

掲載日:2019年08月01日

共有資源管理利用の法制度

本書は、明治政府が西欧から移入した近代的所有権概念の是非を改めて検討するという目的をもって、伝統的な村落共同体等の所有に係る土地資源、水資源、自然資源の管理あるいは利用をめぐる法的諸問題と現代的意義を解明したものであり、著者の研究対象の属性に従い、3部から構成されている。
第1部「土地資源の共的利用」は、「土地は誰が所有し、利用するのか」という問いを掲げ、土地という共有資源の利用の諸形態、あるいはその主体である「共同体」に焦点を当てて、1995年から今日に至るまで継続してきた研究の成果のうち、ある程度まとまった結論を得られた、以下の4本の論文を収録した。

第1章 入会地・入会権をめぐる法制度的課題~環境保護の視点から~
第2章 中国の草原保護法政策
第3章 中国の都市化と土地資源法政策
第4章 沖縄の地割制に関する研究~「家」制度に基づかない農地利用~
第2部「公共財としての水資源」は、「水は誰のものか」という問いを掲げ、水という共有資源をめぐる法規範の構造的問題や内部矛盾、あるいは地下水のような法の空白領域について、アジアから欧州まで文字通りグローバルな研究を行った成果として、以下の4本の論文を収録した。
第5章 河川法と水利権をめぐる法的課題
第6章 地下水保全管理の法規範
第7章 中国の水利権流動化
第8章 オーストラリアの水資源管理法
第3部「共有資源の権利侵害と管理責任」は、「自然物はなぜ守られないのか」そして「共有資源の管理責任はどこにあるのか」という問いを掲げ、土地や水、あるいはそれらを踏まえて存在する自然物という共有資源が侵害を受けた場合の法的問題点、そしてその管理に必要な責任所在について検討した研究に関する、以下の4本の論文を収録した。
第9章 自然環境保全と私権の競合~北川湿地訴訟事件を事例として~
第10章 慣習漁業権の侵害~馬毛島入会権訴訟事件を事例として~
第11章 水利行為による権利侵害~涸れ川公害問題を事例として~
第12章 土地工作物責任をめぐる帰責理論の再検討
本書は、以上12本の論文によって、われわれ人間の生存の根源である土地や水などの共有資源を持続可能な状態で保つための法制度のあり方を、所有、利用、管理、紛争などの様々な観点から世に問おうとするものである。

出版社

成文堂

発行日

2019年8月10日

著者

拓殖大学政経学部教授(民法、環境法担当)。1969年川崎市生まれ。1993年3月早稲田大学法学部卒。1995年3月早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。2003年4月拓殖大学政経学部専任講師、2005年4月同准教授、2013年4月より現職。他に、放送大学客員教授、西東京市建築紛争審査会委員、日本不動産学会学術委員等を務める。主な著書に、『環境法へのアプローチ』(共編著、成文堂、2007)、『農業法講義』(成文堂、2008)、『中国の森林をめぐる法政策研究』(成文堂、2014)、『環境法のフロンティア』(共編著、成文堂、2015)、『法学入門』(共編著、成文堂、2018)、『後藤新平の発想力』(共編著、成文堂、2011)等がある。