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『消費税の転嫁と帰着‐2014年増税が物価に与えた影響』 白石浩介(政経学部教授)著

掲載日:2019年09月06日

消費税の転嫁と帰着‐2014年増税が物価に与えた影響

本書は、消費税のしくみを転嫁と帰着という観点から丁寧に解説したうえで、経済学の視点から消費税転嫁の実態を、データを通じて解明したエビデンス・ベースの財政研究である。

全体を2部構成としている。第Ⅰ部「消費税の現状と経済理論」は、日本の消費税の歴史や転嫁メカニズムを解説したものと、租税の経済学を論じた2つの章からなる。新たに導入される軽減税率や転嫁対策の問題点について詳しく検討した。また、初級から中級レベルにいたる租税の経済理論を包括的に論じており、格好の入門書となっている。

第Ⅱ部「2014年の消費増税が物価に与えた影響」には4つの論文を収めた。税率の引き上げ通りに消費税が完全転嫁されることは保証されないが、日本ではこの事実が見落とされてきた。そこで2014年における消費税率8%への引き上げを研究対象として、CPIPOSといった複数のデータを駆使することにより、商品ごとの価格形成に大きな差が発生したことを、その原因とともに突き止めている。本書の研究貢献は、消費税が引き起こす価格の乱高下のメカニズムを明らかにした点にある。

第Ⅰ部 消費税の現状と経済理論
  第1章 日本の消費税
  第2章 消費税の経済理論
第Ⅱ部 2014年の消費増税が物価に与えた影響
  第3章 消費者物価指数に見る消費税の転嫁
  第4章 Point-of-Sale (POS) データに見る消費税の転嫁
  第5章 マイクロデータに見る消費税の転嫁
  第6章 産業連関分析に見る消費税の転嫁

2019年秋の消費増税では、税制が商品価格の値付けに混乱をもたらしており、税の転嫁がクローズアップされた。本書は、経済学、政治学、租税法の研究者ばかりでなく、消費税に悩む政策担当者や経理マン、企業マーケターに問題解決に向けたヒントを与えるものである。最新の財政事情や租税理論に言及した部分は、公務員試験対策の副読本としても活用できるだろう。

出版社

税務経理協会

発行日

2019年9月20日

著者

1965年生まれ。1988年早稲田大学政治経済学部卒業(経済学士)。1994年London School of Economics修士課程修了(MSc. Economics, MSc. Politics)。2018年名古屋市立大学博士課程修了(博士(経済学))。三菱総合研究所(1988‐2013年)、大阪大学経済学研究科客員助教授(2003‐2007年)、一橋大学経済研究所特任准教授(2007‐2009年)を経て、2013年より現職。

主な著作に、『財政投融資制度の改革と公債市場』(共著、税務経理協会、2003年)、「公的年金改革のマイクロシミュレーション」(財政研究、第5巻、2009年)、「米国型EITCの日本への導入効果」(共著、経済研究、第61巻第2号、2010年)、「年金と高齢者就業:パネルデータ分析」(共著、年金研究、第6巻、2017年)など。