卒業生並びにご家族の皆様(祝辞)

掲載日:2020年03月23日

拓殖大学では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、令和元年度卒業式をやむなく中止することを決定いたしました。
卒業生の皆様にとって、人生の節目の思い出に残る最後の記念行事であり、卒業生並びにご家族の皆様のお気持ちを思うと、誠に辛い判断となりましたが、少しでも安心して新しい門出を迎えられるよう、また国内外での感染がこれ以上拡大しないようにするための対応であることを、何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。
式典当日、登壇を予定しておりました、川名 明夫 学長、森本 敏 総長、来賓代表 赤澤 徹 学友会会長より、メッセージを掲載いたします。 感染が一刻も早く収まり、日常の生活に戻るよう切に願うとともに、卒業生の皆さんの 今後のご活躍を祈念いたします。

拓殖大学

卒業生の皆さんへ

拓殖大学学長   川 名  明 夫

本日めでたく拓殖大学を卒業されることとなった皆さん、おめでとうございます。本来であれば、卒業式の式典において直接皆さんにお祝いの言葉を述べるべき所、今回の新型コロナウィルスの伝染拡大により式典を中止することとなった為、このような形でしかお祝いの言葉を述べることができなくなったことは非常に残念でなりません。卒業される皆さんにとって、卒業式は4年間の思い出に残る学生生活最後の記念行事であり、式典の中止は卒業生の皆さんをはじめご家族の皆様にとってさぞや残念なことと推察いたしますが、皆様の安全と伝染拡大を防ぐ社会的責任からの決断であり、ご理解を頂きたいと思います。

さて、現在の日本は、急速な人口減少・高齢化、エネルギー・環境制約などの様々な社会問題を抱え、その将来は必ずしも明るいものとは言えません。しかし、その一方で、日本の抱えている様々な社会問題を解決するため、人工知能(AI)、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)、ロボティクスなどの先端技術を高度化し、産業や社会生活に取り入れ、日本の強みとリソースを最大限活用することにより、日本ならではの持続可能でインクルーシブな経済社会システムであるSociety 5.0(「超スマート社会」)実現に向けた取り組みが加速しています。また、世界各国でも日本と同様、これまでの資本集約型・労働集約型経済から情報や知識が経済を動かすような知識集約型経済への移行が急速に進んでいます。このような知識集約型経済を中心とする社会を牽引していくためには、これまで以上に知の生産、価値創造を先導する高度な人材が必要とされます。

皆さんには、このような知識集約型社会における知の生産、価値創造の牽引役となってもらわなくてはいけません。急速に変化する社会の中では、新しい技術やシステムもあっという間に陳腐化してしまいます。しかし、その基礎となる技術、システムは変わることはありません。学部の4年間で学んだ知識、技術を基礎に、これからの社会が抱える課題に果敢に挑戦し、その力をいかんなく発揮し新しい社会を牽引して行って下さい。

皆さんは、『世界的な視野に立って、国内外の人々と協働して積極的に課題の解決にチャレンジするグローバル人材(拓殖人材)の育成』と言う本学の教育目標の下、「国際性」、「専門性」、「人間性」を兼ね備えた拓殖人材を目指してこの4年間学んできたことと思います。そして、それぞれの皆さんによって程度の差はあるとは思いますが、「国際性」「専門性」「人間性」といった3つの力をしっかりと身に着けていただけたものと確信しています。しかし、先ほども申し上げたように社会は急速に変化しています。いま皆さんが持っている専門の知識や技術があっという間に陳腐化してしまう可能性もあります。従って、常に新しい知識、技術を取り入れることができる柔軟性を持つとともに、積極的に新しい知識を取り入れるためにも常に学ぶ姿勢を忘れずにいてください。「国際性」にかかわる語学力、「専門性」にかかわる専門的知識の量といった部分に関してはAIはその力をいかんなく発揮し、私たちを助けてくれるでしょう。しかし、グローバル化が進み、AIやIoTの技術が進展していく中で、多様な人々と協力しながら仕事を進めていく事が必要となった時に一番重要なのは、お互いを理解することが出来る「人間性」であり、このような能力をAIで補う訳にはいきません。多様な人と協力し仕事を進めるためには、どのような困難にあってもそれを乗り越え前進していく強い意志を持つとともに、他の人への思いやりを決して忘れないといったタフな人間力が必要です。

皆さんは、この4年間、拓殖大学でいわゆる学問を学んだだけではなく、課外活動やボランティア活動などを通して多くの先輩、友人と共に活動し、タフな人間力を身につけたことと思います。拓殖大学の学びの中で身に付けた、「国際性」「専門性」「人間性」に自信と誇りを持ち、この予測不能と言われている未来に向かって自らの道を切り開いていってほしいと思います。

皆さんのこれからの活躍を期待し、私から卒業生の皆さんへのお祝いの言葉といたします。

卒業生の皆さんへ

拓殖大学総長   森 本   敏

このたびは、新型コロナウィルス発生に伴う諸事情により、皆さんの卒業式式典が中止になり、大変残念です。卒業式を楽しみにしておられた皆さんや保護者の皆様はさぞ、がっかりされておられることと思います。しかし、皆さんが、本学所定の課程履修を終了し、卒業されたことに変わりはありません。まず、この度のご卒業に対し、衷心よりお祝いの言葉を申し上げます。

皆さんにとって、この4年の歳月は誠に短く、思い起こす「いとま」さえないと思いますが、我々の周辺は決して平穏な日々が続いたわけではありません。いくつかの災害にも見舞われました。また、この度の新型コロナウイルスは想像しなかった事態です。

しかし、人間が地球社会に生きている限り、今後もこのような非常事態に遭遇し、これを乗り越えていくことが求められます。その際に忘れてはならないことは、いかなる場合でも自分を見失うことなく、自分の目標と使命をよく認識しつつ力強く生きていくことです。人生とは人によってたどる道がそれぞれに異なります。その実態は、苦楽の繰り返しであり、苦しい状況をいかに切り抜けて賢明に生き、本来のあるべき姿を取り戻すことができるかです。その時の振る舞いが人の一生を決め、その人の値打ちを決めることになります。自ら進んで楽な道を選ぶより、忍耐すべきことは精一杯、耐え、苦しい道を選択することです。他人の苦しみに思いを寄せ、できれば助けの手を差し伸べる余裕を持つことです。要は、こうした決断を行う場合に留意することはバランス感覚と他との協調を重んじることです。

そして決断したら断固としてやり抜き、途中で手を抜かないことです。皆さんの大学教育は、これで終わりです。あとは、実社会で社会教育を受けることになります。誠に人の一生とは学ぶことの連続です。皆さんが本学で学んだことは物事の基本であり、これからの精進によってその知識を生かす術になります。そして、やがて社会や国にとって大切な役割を果たす機会がくると思います。自分の希望とは関係なくそういう機会に遭遇した場合には精一杯、本学で学んだことを活用し、活躍していただくことを期待します。皆さんのご健闘を心からお祈りし、皆さんを送る言葉とします。

祝辞

学友会会長   赤 澤    徹

皆さん、ご卒業おめでとうございます。

皆さんは、歴史と伝統を誇る拓殖大学の118回目の卒業生、即ち「118期生」です。そして、大学院卒業生は、「70回生」になります。脈々と受け継がれてきた拓大の歴史の重みを感じずにはおれません。

 さて、今年の初めから中国・武漢で発生した「コロナウィルス肺炎」の病原体が今や全世界を覆いつくさんとする勢いで蔓延する事態へとなり、卒業式を「中止」せざるを得なくなりました。大変残念なことでありますが、一生忘れ得ぬ出来事として記憶に残ることでしょう。

皆さんは、学友会をご存知ですか。本会は、拓殖大学の卒業生の集まり即ち同窓会です。

皆さんは、卒業と同時に学友会員になるわけですが本会の目的は、会員相互の親睦を図かり、母校への支援や学生スポーツ・文化活動への助成など、幅広く活動しております。拓殖大学が台湾協会学校として明治33年(1900年)創立されましたが、その9年後の明治42年(1909年)に早くも学友会が設立され、本年で110年になります。2月29日(土)創立110周年記念祝賀会を開催する予定でしたが、やはり今回の騒動で来年に延期する事にしました。

学友会の規模は、卒業生15万人、国内88支部、海外34支部を数える一大組織となっております。本会は、機関誌「茗荷谷たより」を年6回発行しており、学友会ホームページで電子版もご覧いただけます。また、皆さんも学友会員となりますので、その居住する支部の集まりに是非参加してみて下さい。

全国の各支部は、年一回、支部総会或いは合同総会を開き、懇親会や講演会等の事業を展開しており、会員間の親睦と拓大特有の先輩・後輩の熱い繋がりを深め、情報交換の場として活発に活動しております。

式典の最後に校歌を斉唱しますが、創立20周年記念式典で披露され今年で100年になります。他の旧制大学では、戦後校歌の歌詞を変えたり、全く新しいものに変えてしまった大学がありますが、拓殖大学の校歌は100年変わっておりません。

校歌の一節「闇は消えよと呼ぶは誰(た)ぞ 人は醒めよと呼ぶは誰(た)ぞ」の「誰(た)ぞ」は、今日卒業する皆さん方のことです。社会、国家、世界をしっかり見据え、力強く大地を踏みしめ、大空に向かって大きく羽ばたいて下さい。

ご卒業される後輩の皆さん! 本日は、誠におめでとうございます。