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『日本を開国させた男、松平忠固 ~近代日本の礎を築いた老中~』関良基(政経学部教授)著

掲載日:2020年06月29日

日本を開国させた男、松平忠固 ~近代日本の礎を築いた老中~

「日本を開国したのは誰か?」と聞かれれば、多くの日本人は「井伊直弼」と答えるだろう。歴史教育の現状において、それが正解とされる。もし日本史の試験において「松平忠固」と解答すれば不正解とされるだろう。そもそも中学や高校の歴史の教員であっても、松平忠固などという名前はほとんど誰も知らないであろう。
しかし歴史的事実として、徳川政権の閣内にあって、ペリー来航の当初から交易通商を声高に主張しつづけ、徳川斉昭や井伊直弼といった政敵たちと熾烈な闘いを繰り広げ、そして最終的に日米修好通商条約の調印を断行した人物は、老中であり信州上田藩主であった松平忠固である。
松平忠固は、世界との交易で国を豊かにしようと、養蚕業を振興し生糸輸出の準備をし、攘夷論の吹き荒れる中、人種的偏見を全く持たずに日米友好を推進した開国の父である。生糸は江戸末期から昭和初期まで日本経済を支え続けることになる。
本書は、開国の是非をめぐる江戸城中の熾烈な闘い、忠固の権力を支えた大奥の女性たち、国際的視野を持ち洋学知識を摂取しようと学びつづけた忠固の家臣たち、国際貿易のパイオニア商人たち、世界から高く評価された養蚕技術と生糸を開発した百姓たちなど、まさに権力中枢から庶民レベルにいたるまで、江戸末期の時代を多角的・重層的に描き出す。尊攘運動を繰り広げた「志士」中心に描かれてきた従来の幕末史とは違った視点で、底流で展開されていた日本近代化への歩みが理解されるだろう。
しかし、明治維新を神話化するためには、「幕府は無能」で、「条約は不平等」でなければならず、松平忠固の業績は闇に葬られる運命にあった。本書は従来の歴史教科書の誤りを指摘し、開国をめぐる歴史の真相を明らかにする。

■本の内容
第1章 日米和親条約の舞台裏 -徳川斉昭と松平忠優の激闘
第2章 日米修好通商条約の知られざる真相 -井伊直弼と松平忠固の攻防
第3章 "不平等"でなかった日米修好通商条約
第4章 日本の独立を守った"市井の庶民"たち
第5章 日本の独立を脅かした"尊攘志士"たち
終章  近代日本の扉を開いた政治家、松平忠固

出版社

作品社

発行日

2020年7月5日

著者

関 良基 (せき よしき)
拓殖大学政経学部教授。1969年信州上田生まれ。京都大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。早稲田大学助手、(財)地球環境戦略研究機関・客員研究員などを経て、2007年より拓殖大学政経学部。主な著書に『社会的共通資本としての森』(宇沢弘文氏との共著、東京大学出版会)『中国の森林再生』(御茶の水書房)など。