『日の丸コンテナ会社ONEはなぜ成功したのか?』松田琢磨商学部教授共著
掲載日:2023年01月26日
日の丸コンテナ会社ONEはなぜ成功したのか?
日本の伝統的大企業の再生の方向性を示す格好の事例
鮮烈なマゼンタ(赤紫色)のコンテナやコンテナ船を見たことがありますか? 日本海運業の存亡を賭けた日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ船事業部門の大統合で誕生したシンガポールに本拠を置くOcean Network Express、略称ONE。本書はマゼンタのコンテナで2017年に生まれたONEの設立からの軌跡を追ったビジネスドキュメントです。
世界第2位のコンテナ港を擁するシンガポールで、邦船3社の30代、40代が中心となって作り上げた19カ国のスタッフを抱える多国籍かつ世界標準のスタートアップは、結果としてコロナ禍によるサプライチェーンの混乱とコンテナ運賃急騰などもあり、2年連続で2兆円の利益を上げました。赤字お荷物部門からの大逆転劇です。
成功のキーワードは、「出島組織」。その定義は、以下の2点です。
①本体組織から何かしらの形ではみ出して
②新しい価値を生む組織
ONEの目覚ましい成功は、日本の伝統的な大企業、いわゆるJTC(Japanese Traditional Company)の再生の方向性を示す格好の事例と言えるでしょう。
構成は以下の通りです。
プロローグ
邦船社3社が赤字お荷物事業を統合してシンガポールに飛ばしたら、「出島組織」に奇跡が起きて2年連続で利益が2兆円!
第1章 世界的不況とコンテナ市況の低迷
邦船3社、コンテナ事業の統合を発表
リーマン・ショックとマースク・ショック
3社の苦闘と苦悩 効率化も規模の壁
コンテナ船の大型化と業務効率化
■コラム What is TEU ?
■コラム コンテナ輸送システムの誕生
第2章 業界大再編と淘汰の嵐
欧州勢の攻勢
巨大市場を抱える中国の影
2M、G6、CKYHE、O3の4グループに集約されるが......
欧州連合、中華連合、残された12社
第3章 背水の陣として発足したONE
新アライアンス形成
韓進海運の破綻
統合プロジェクトの本格化
「白いキャンパスに絵を描く」
思わぬトラブル続出
サービス開始2年目で黒字達成
■コラム 海運同盟と航路安定化協定
第4章 新天地とコロナ禍
シンガポールでの基盤整備
Operational Efficiency
コロナ禍による空前の活況
■コラム コンテナ不足に直撃された日本
第5章:ONE「奇跡の成功」の舞台裏
お荷物部門からの大逆転
■コラム 純利益が売上高を上回った川崎汽船 奇跡が起きた背景
■コラム 「イノベーションのジレンマ」とONE コンテナ輸送の未来
エピローグ 病床からのクリスマスカード
■コラム JTCのアンチテーゼとしての出島組織
出版社
日経BP
発行日
2023年2月13日
著者
松田琢磨(まつだたくま)
1973年東京生まれ。拓殖大学商学部教授。東京工業大学理工学研究科単位取得退学。博士(学術)。(公財)日本海事センター企画研究部主任研究員を経て現職。専門は海運経済学・物流。