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『投票の政治心理学―投票者一人ひとりの思考に迫る方法論』 岡田陽介(政経学部准教授)監訳

掲載日:2023年09月07日

『投票の政治心理学―投票者一人ひとりの思考に迫る方法論』

本書の特徴は、「選挙の機能」の捉え方にある。伝統的な政治心理学における投票行動研究では、「政治の代表者の選出」をはじめとした制度に基づく機能に焦点が当てられてきた。しかし本書では、選挙には投票者を中心に据えた機能も備わっている、と考える。選挙は政府と市民、さらには市民同士の交流の機会となっていて、そのことが確かに個々の投票者に影響を与えている――これがその考えの中核である。

著者らは選挙のそうした影響を知るため、「行動」「経験」「解決感」という三本の柱を分析の軸に据えた斬新な方法論を設計し、世界6ヵ国(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ジョージア、南アフリカ共和国)で大規模な調査を行った。対象とした選挙の中には、あのEU離脱国民投票や2016年のアメリカ大統領選挙といった、世界中の関心を広く集めた選挙も含まれる。

実際に行った調査の方法はきわめてユニークである。自己報告型データ(標準的な質問票調査、選挙期間の前後の日記や、投票直後のインタビューなど)、観察データ(投票立会人による観察報告)、そして実験型データ(模擬投票のシーンを撮影し、その映像を分析するなど)と三方向から多彩な情報を収集。パーソナリティ特性や選挙の記憶、そして選挙のさまざまな段階で抱く感情などに着目して分析している。

本書は従来の研究における想定を覆し、新たなスタンダードとなりうるか。国を問わず、誰もが関与しうる選挙。その大規模で普遍的なイベントをより深く理解するための、挑戦的研究。

(出版社HPより)

出版社

みすず書房

発行日

2023年9月11日

著者

岡田 陽介(おかだ・ようすけ)
2010年学習院大学大学院政治学研究科博士後期課程修了。博士(政治学)。慶應義塾大学法学研究科助教、立教大学社会学部助教、拓殖大学助教(2017年4月)を経て、2019年4月より現職。投票参加を中心とした投票行動研究に従事。著書として『政治的義務感と投票参加―有権者の社会関係資本と政治的エピソード記憶』(木鐸社/2017年)、『基礎ゼミ政治学』(共著/世界思想社/2019年)、『民主政の赤字―議会・選挙制度の課題を探る』(共著/一藝社/2020年)、『東日本大震災からの復興過程と住民意識―民主制下における復旧・復興の課題』(共著/木鐸社/2021年)など。