『江戸の憲法構想 ―日本近代史の"イフ"』 関 良基 (政経学部教授) 著
掲載日:2024年06月19日
江戸の憲法構想 ―日本近代史の“イフ”
江戸時代に憲法草案がいくつも書かれていたと言えば、「そんなバカな」と思われるかも知れない。本書では、江戸末の慶応年間、既に徳川政権の内外の知識人の間で、憲法に基づいた近代的な立憲政体を確立しようという動きが始まっていたことを明らかにしていく。明治維新がなければ、憲法に基づく議会政治はもっと早く始まっていたはずであり、しかもそれは、現在の象徴天皇制に近い、より穏健な近代化の途であった。本書では、マルクス主義史観、司馬史観、丸山眞男の政治思想史などをいずれも批判的に検討し、なぜそれら既存の歴史観は慶応年間の憲法構想を覆い隠そうとしてきたのかも併せて論じる。 既存の歴史観では、江戸時代の儒学は近代化の障害であったと考えてきた。本書では、江戸の儒学は西洋の人権論や普遍的な国家平等意識と親和的であったこと、明治維新のなかった場合の江戸からの近代化は、より人間の個性を尊重し福祉と教育も重視したものになったであろうことなど、「歴史のイフ」を論じていく。そして最後に、福沢諭吉から渋沢栄一への一万円札の肖像交代の意味を考える。
【目次】
はじめに――"江戸の憲法構想"と "もう一つの近代日本"を求めて
第1部 徳川の近代国家構想――もう一つの日本近代史の可能性
第1章 よみがえる徳川近代史観――尾佐竹猛と大久保利謙
第2章 慶応年間の憲法構想――ジョセフ・ヒコ、赤松小三郎、津田真道、松平乗謨、西周、山本覚馬
第3章 サトウとグラバーが王政復古をもたらした
第2部 徹底批判〈明治維新〉史観――バタフライ史観で読み解く
第4章 〈皇国史観〉〈講座派史観〉〈司馬史観〉の愛憎劇
第5章 唯物史観からバタフライ史観へ
第6章 丸山眞男は右派史観復活の後押しをした
終章 福沢諭吉から渋沢栄一へ
出版社
作品社
発行日
2024年3月30日
著者
関 良基 (せき よしき)
拓殖大学政経学部教授。1969年信州上田生まれ。京都大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。早稲田大学助手、(財)地球環境戦略研究機関・客員研究員などを経て、2007年より拓殖大学政経学部。主な著書に『社会的共通資本としての森』(宇沢弘文氏との共著、東京大学出版会)、『日本を開国させた男、松平忠固』(作品社)など。