『災害対処の文化論シリーズ *Ⅹ* 12世紀日本の気候変動と対気象観 ~「天變頻示、凶事間聞」とは何か~』小林 健彦(言語教育研究科 客員教授 )著
掲載日:2025年07月08日
日本の12世紀は平安時代末期に当たり、政治史的には源平の争乱期を経て、鎌倉政権(幕府)の成立に至る古代と中世との過渡期にありました。政治的にも経済的にも文化的にも熱い時代であったが、気象的にも暑い時代でした。本書は、11世紀~12世紀~13世紀の時期を中心としながら、当時の人々に依って筆録をされていた日記・古記録史料等を根拠としながら、そうした暑熱の時代を過ごしていた人々が諸々の気象現象に対して、どの様な認識を抱き、実際に対処をしていたのかに就いて、それぞれの現象毎に区分し検証を行ないつつ、究明をしようとしたものです。当時に於ける生活文化の一端を垣間見ようと試みようとしました。
夏の生活困難と暑熱地獄!平安時代にもあったかき氷。いったいどうやって食べた?止雨と祈雨。なかなか思う様にならない降水と京都の浸水被害!高潮
の脅威!亡国のわざわいとは?降雪と極寒。暑熱の対極にあった気象現象とは?気象の異変と動植物。ニホンオオカミ
による恐怖の人身傷害事件とは?濃尾平野に見る洪水対策と共助!画像データも豊富に掲載。中学生以上向き。講演資料、地域学習、国語学習、防災・災害学習等にも幅広くご利用いただけます。
目次:
まえがき
本書を読み解く上でのキーワード
1.「天變頻示、凶事間聞」とは何か
はじめに
1-1:自然現象を記録する意義とは何か~何故、気象現象を書き留めたのか~
1-2:夏の生活困難 ~「暑熱」地獄~
1-3:雷鳴と天
1-3-1:穢気(えげ)と発雷
1-4:人魂と気候変動
1-5:落雷と円勝寺九重塔の焼失
1-6:大風
1-6-1:高潮 ―亡国の殃(わざわい)
1-7:大雨
1-8:大雨と卜(うらない)
1-9:神泉苑に於ける請雨と大雨
1-10:祈雨・請雨、止雨祈願の記録とその特質
1-11:法会と雨脚 ~雨儀と晴儀~
1-12:降雪と寒さ ~暑熱の対極にあるもの~
1-13:降雹
1-14:治承4年(1180)4月29日の異変
1-15:赤気(せっき)
1-16:仁平元年・久安7年(1151)正月26日付け近衛天皇の詔に見る対気象観
1-17:地震発生と風雨の災・難
1-18:異損法と気象災害
1-19:気象の異変と動植物
1-20:寛喜の飢饉と気象現象
1-21:気象現象と心神
1-22:建物の「顚倒」と気象現象
1-23:天文現象と気象の動向
おわりに
註
2.「今昔物語集」に見る気象現象と災異
はじめに
註
2-1:卷第十九「住(スミシ)河ノ邊(ホトリ)ニ僧、値(アヒテ)洪水ニ弃(ステ)子ヲ助ケタル母ヲ語(コト) 第廿七」に見る高潮の脅威
2-2:巻第二十「出雲寺ノ別當浄覚、食父成鯰肉得現報(チチノナリシナマヅノシシヲクラハムトシテゲンポウヲエ)忽ニ死ニタル語(コト) 第卅四」に見る鯰と暴風
2-3:巻第二十二「高藤ノ内大臣ノ語(コト) 第七」に見る「雷電霹靂(ライデンヘキレキ)」観
2-4:巻第二十四「高陽ノ親王、造(ツクリテ)人形(ヒトノカタチ)ヲ立(タテタル)田ノ中ニ語(コト) 第一」に見る「天下(テンガ)旱魃」
2-5:巻第二十「高市(タケチ)ノ中納言、依(ヨリテ)正直(シヤウジキ)ニ感(カンゼシメタル)神ヲ語(コト) 第四十一」に見る「天下旱颰(魃)」
2-6:巻第二十六「美濃ノ国ノ因幡ノ河、出水流入(ミヅイデテヒトヲナガセル)語(コト) 第三」に見る「水災害」と「共助」
2-7:巻第二十八「越前ノ守為盛、付(附)六衛府官人(ロクエフノクワンニンヲシタガへタル)語(コト) 第五」に見る夏季の困難~食中毒と旱魃と風流(フリウ)~
2-8:巻第三十一「讃岐(サヌキ)ノ国ノ満農(マノ)ノ池頽(クヅ)シタル国司ノ語(コト) 第廿二」に見る旱魃と人心
2-9:巻第三十一「近江ノ国ノ栗太(クルモト)ノ郡ノ大キナル柞(カシ)ノ語(コト) 第三十七」に見る大木と気象の異変
おわりに
参考文献表
あとがき

出版社
シーズネット株式会社
発行日
2025年7月7日
著者

小林 健彦(こばやし たけひこ)
学習院大学大学院人文科学研究科史学専攻 博士後期課程 単位取得 満期退学。現職は、拓殖大学大学院言語教育研究科 客員教授、新潟産業大学経済学部教授。専門は歴史工学、日本語運用史、災害対処文化史、対外交渉史等。
主な単著書には、『越後上杉氏と京都雑掌』戦国史研究叢書13(岩田書院、2015年)、『韓半島と越国』(シーズネット株式会社、2015年)、『災害対処の文化論シリーズⅠ~Ⅹ』(計10冊、同、2015年~2025年)、『日本語と日本文化の歴史基層論』(同、2017年)、等がある。