『新訂版 現代ブラジル論-激動の世界で高まる存在感』竹下 幸治郎(国際学部教授)共著
掲載日:2025年10月17日
現代ブラジル論
グローバルサウスの一角として国際場裏の場で存在感を増しているブラジル。しかし、言葉(ポルトガル語)や距離の問題もあり、日本では粒度の細かい経済・ビジネスの情報が入手しづらく、また、包括的に同国を解説している著書も少ないのが現状です。本書は2019年に刊行した「現代ブラジル論」の新訂版として、前著同様ブラジルを「政治」「経済・ビジネス」「国際関係」の3つの側面に分けて解説しています。
私は経済・ビジネスに関する章を執筆しましたが、脆弱とみられがちなブラジル経済が意外と強靭であることを解説したほか、困難だった制度改革を成し遂げたことにより、企業活動に関係するビジネス環境が良い方向に変化していることにも触れました。また、金融分野のイノベーションによる社会変容や、独特の環境対応車振興策など今後注目すべきブラジルの産業も紹介しています。
未来の大国と言われ続けたブラジルが、着実にその歩みを進めている様を読者に感じて頂ければと思っています。
目次
はじめに(堀坂浩太郎)
第Ⅰ部 グローバルサウスのブラジル----ルーラ政権第三期
第1章 ルーラ第三期(3.0)の政治と外交(子安昭子)
1 国家の再生と社会開発重視の内政
2 混沌の世界に挑み続ける多国間主義の外交
第2章 ルーラ第三期(3.0)の経済・ビジネス(竹下幸治郎)
1 政権前半の経済動静
2 「強み」を活かし、産業の底上げ目論む
3 イノベーションを通じた社会包摂への試み
第Ⅱ部 コロナ禍までの今世紀を読み解く
第3章 政治(堀坂浩太郎)
1 二一世紀初頭の基調
2 政治環境を劣化させた汚職事件
3 左から右への旋回
4 独立独行のボルソナーロ政権
第4章 経済・ビジネス(竹下幸治郎)
1 好景気からの転落、回復への道のり
2 ブラジル経済、成長の方程式
3 テメル政権下の軌道修正
4 ボルソナーロ政権が目指した経済・産業政策の挑戦
第5章 国際関係(子安昭子)
1 危機下で挑んだメガ・イベント
2 「グローバル・アクター」からの後退
3 テメル外交の方向性
4 日伯関係のテコ入れと挑戦
5 ボルソナーロ政権下のプラグマティックな外交
第Ⅲ部 民主化(一九八五年三月)後の制度設計
第6章 政治(堀坂浩太郎)
1 一九八八年憲法体制と国民の政治参加
2 政治制度とガバナンス
3 治安、安全保障と情報社会の進展
第7章 経済・ビジネス(竹下幸治郎)
1 新自由主義下の制度改革
2 安定成長のための基盤づくり
3 競争力強化に向けた産業・企業の挑戦
第8章 国際関係(子安昭子)
1 外交を巡る環境の変化
2 二一世紀ブラジルのグローバル外交
3 外交のリソース(資源)
第Ⅳ部 歴史・地誌・人と社会
第9章 歴史(子安昭子)
1 ブラジルの「発見」から共和制まで
2 「バルガス革命」から軍事クーデタまで
3 軍事政権時代
第10章 地誌(竹下幸治郎)
1 広大な国土と豊かな自然
2 多彩な産業の形成
3 広さの壁に挑む国土開発
第11章 人と社会(堀坂浩太郎)
1 カラフルなブラジル社会
2 男性主役の世界に大きな変化
3 歪み温存の社会

出版社
上智大学出版
発行日
2025年9月30日
著者

竹下 幸治郎(たけした こうじろう)
上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒。明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科にてMBA取得。1992年日本貿易振興機構(JETRO)入講後、ブラジル・チリ駐在、ジェトロ本部でも中南米関係部署の管理職を歴任。2019年拓殖大学国際学部准教授として着任。2024年4月より同学部教授。専門は中南米経済・産業・通商政策。主な出版物『ビジネスガイド・ブラジル』(ジェトロ、2002年)、『ブラジル新時代』(勁草書房、2004年)、現代ブラジル論(上智大学出版、2019年)など。