『江戸から見直す民主主義』 関良基(政経学部教授)共著 田中優子・橋本真吾
掲載日:2026年02月09日
江戸から見直す民主主義
元法政大学総長の田中優子氏と気鋭の若手洋学史研究者の橋本真吾氏と本学政経学部教授の関良基という異色の(?)コラボによる共著。
これまで江戸時代は身分制度に縛られた不自由な社会で、儒教は近代に背を向けた封建教学であったという具合に教わってきました。本書はそうした定説に異議を唱え、江戸時代に民主主義のルーツを求めるという内容です。
江戸時代の村々で自然に発生していった村役人の入札(=選挙)による選出や、全員参加型で徹底的に話し合った村の寄り合い(=議会)など、日本文化の中から内発的に育っていた民主主義の萌芽にフォーカスします。そして戊辰戦争による暴力的な方法ではなく、江戸の慣行を引き継いだ平和的な方法で日本が近代化していれば、より人間の個性を尊重し、社会福祉にも配慮したであろう、日本的な民主社会が誕生していた可能性があったのではないかと論じています。
本書は、過去のみを論じるのではなく、江戸の知恵を取り入れて民主主義のリニューアルを目指そうという未来への希望も込められています。というのも現在、民主主義を価値観としてきた多くの国々において社会の分断が進行しており、その結果、権威主義的なリーダーシップに期待する空気が強まっています。
民主主義を救い出すためには、分断を放置したまま安直に多数決で事を決しようとするのではなく、対立する両陣営が、お互いの差異は差異として尊重しつつも、少しでも一致する点を見出し、一致する部分を大事にしながら、お互いに歩みよろうと努力することが必要ではないでしょうか。江戸時代の寄り合いは、全会一致を目指して、時間をかけて丹念な話し合いを行っていました。こうした話し合いの慣行から、現代人が学ぶべき点は多いだろうと思われるのです。
目次
第1章 江戸の教育(田中 優子)
江戸の教育制度の特色を紹介し、民主主義という考え方が生まれる背景・土壌を解説。
第2章 江戸時代に民主主義を考えた人々(関 良基)
江戸時代に民主主義のシステムについて考えた赤松小三郎、神田孝平、加藤弘之らについて解説。
第3章 江戸の人々が知った民主主義 (橋本 真吾)
幕末の蘭学者たちが、外国語文献にある民主主義の考え方をいかに翻訳し、日本に紹介したかを辿る。
第4章 三者座談会
江戸時代に民主主義の萌芽が見られるも、明治で定着せず、抹殺された理由、もし明治時代に芽が花開いていたら、どうなったかを論じる。
出版社
現代書館
発行日
2025年12月20日
著者
関 良基 (せき よしき)
拓殖大学政経学部教授。1969年信州上田生まれ。京都大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。早稲田大学助手、(財)地球環境戦略研究機関・客員研究員などを経て、2007年より拓殖大学政経学部。主な著書に『社会的共通資本としての森』(宇沢弘文氏との共著、東京大学出版会)、『日本を開国させた男、松平忠固』(作品社)など。

