『複数言語環境で育つ高校生のリテラシー「書く」ことと向き合う実践を創る』小林 美希(商学部 准教授)著

掲載日:2026年07月01日

複数言語環境で育つ高校生のリテラシー 「書く」ことと向き合う実践を創る

本書は、文化間移動により、複数言語環境で育つ高校生のリテラシーを育むための日本語教育は、どのようにあるべきかを探究したものである。

1990年以降、日本では少子高齢化による労働力不足を補うため、外国人労働者の受け入れが進められてきた。2019年には、入管法の一部改正により、外国人の在留を認める就労を目的とした資格である「特定技能1号」「特定技能2号」が創設され、一定の条件を満たせば、家族の帯同が可能になった。このような社会状況の中、日本の学校教育現場では、日本語を母語としない児童生徒(Japanese as a Second Language Students:以下、JSL生徒)の数が増加し、JSL生徒に対する日本語教育をどのように進めていくかが喫緊の課題となっている。しかしながら、これまではJSL生徒に対する日本語指導に求められるものが、日本語の習得のみならず、教科学習支援、母語・母文化保持、アイデンティティの構築等、多岐にわたること、さらにそれらがすべて各自治体や学校教育現場に委ねられる状況が続いていたことから、公開されている実践研究の数が少なく、研究が十分に進展してこなかった。

2019年に「日本語教育推進法」が施行され、国籍に関係なくすべての児童生徒に対する学びの保障に向け国が動き出し始めた今、そして日本の公立高校における「特別の教育課程」が2023年に制度化された今、日本は複数言語環境で育つ移民の子どもたちの教育をどのように捉え、どのように変革していくのか。本書では、このような過渡期にある学校教育現場の現状を、実践者である著者の言語教育観の変容と実践内容の変容、生徒のことばの学びの変容について「書く」実践をもとに詳細に描き出し、実践教育現場から発信することで、リテラシー教育のあり方について考える。

本書の概要、構成は以下のサイトに詳しく紹介されています。
【早稲田大学出版部 早稲田大学エウプラクシス叢書】
https://www.waseda-up.co.jp/cat664/post-913.html

目次

はじめに

序章 複数言語環境で育つ高校生を取り巻く環境
第1節 複数言語環境で育つ高校生を取り巻く文脈
第2節 複数言語環境で育つ高校生を取り巻く施策
第3節 「日本語指導が必要な児童生徒」の現状と年少者日本語教育の課題
第4節 本研究の主題と構成

第Ⅰ部 理論編――本研究の理論的枠組みと研究方法

第1章 問題の所在
第1節 「書く」ことをどのように捉えるか
第2節 先行研究と本研究の視座
第3節 本研究の目的と研究課題

第2章 「ことばの力」をどのように捉えるか
第1節 理論的枠組み――批判的リテラシー教育の視点
第2節 日本語教育実践を捉える視点――トランスランゲージング
第3節 複数言語環境で育つ高校生に対する日本語教育実践の捉え方

第3章 研究方法
第1節 「実践研究」とは何か
第2節 質的研究の「質」を高めるために何を留意すべきか
第3節 「実践研究」の概要とデータの概要
第4節 インタビュー調査の概要とデータの概要
第5節 研究倫理

第Ⅱ部 実践編――高校生への「書く」指導の実践研究

第4章 〈実践研究①〉「言語重視」の実践を問い直す
第1節 本章の研究主題
第2節 「自己表現重視」の「書く」実践で着目した先行研究
第3節 実践の概要
第4節 「自己表現重視」の「書く」実践により生じた混乱
第5節 「言語重視」の重要性への気付き
第6節 考察
第7節 小括:複数言語環境で育つJSL 生徒にとって必要なリテラシーとは何か

第5章 〈実践研究②〉「言語重視・自己表現重視」の実践の試み
 第1節 本章の研究主題
 第2節 「書く」実践を行う上で着目した先行研究
 第3節 実践の概要
 第4節 分析結果
 第5節 考察
 第6節 小括:複数言語環境で育つJSL生徒にとって必要なリテラシーとは何か

第6章 〈実践研究③〉「言語重視・自己表現重視」の実践を再考する
第1節 本章の研究主題
第2節 論理的に思考する力をどのように育むか
第3節 実践の概要
第4節 分析結果
第5節 考察
第6節 小括:複数言語環境で育つJSL生徒にとって必要なリテラシーとは何か

第7章 〈実践研究④〉「言語重視・自己表現重視」の実践を通してどのような教室をめざすのか
第1節 本章の研究主題
第2節 どのように実践をデザインしていったのか
第3節 実践の概要
第4節 分析結果
第5節 考察
第6節 小括:複数言語環境で育つJSL生徒にとって必要なリテラシーとは何か

第Ⅲ部――実践研究の総括と展望

第8章 JSL 生徒は「ことばの力」とその学びをどのように捉え,意味づけているか
第1節 本章の研究主題
第2節 先行研究―ことばの学びを語りから捉える
第3節 インタビュー調査の概要
第4節 【分析結果①】高校3年時の語りから
第5節 【分析結果②】大学1年生修了時の語りから
第6節 【分析結果③】大学2年生修了時の語りから
第7節 考察

第9章 総合的考察
第1節 〈実践研究〉による知見のまとめ
第2節 複数言語環境で育つJSL 生徒のリテラシーを育むための日本語教育はどのようにあるべきか

第10章 リテラシー教育実践の可能性と展望
第1節 本章の研究主題
第2節 〈新しい能力〉とリテラシー
第3節 リテラシー研究の方向性と展開
第4節 今後の展望
第5節 本研究の意義と今後の課題

あとがき

出版社

早稲田大学出版部

発行日

2026年6月25日

著者

小林 美希(コバヤシ ミキ)
拓殖大学商学部准教授。
東京女子大学現代文化学部言語文化学科卒業。早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程修了、同大学院博士後期課程修了。博士(日本語教育学)。専門は、日本語教育、年少者日本語教育。登録日本語教員。早稲田大学日本語教育研究センター契約講師、非常勤インストラクター(2008年~2024年)、早稲田大学大学院日本語教育研究科助手(2022年~2024年)、同大学招聘研究員(2024年~2025年)を経て2025年より現職。