『琉球列島の持続可能な発展と安全保障―「対中抑止のフロンティア」か「平和の緩衝地帯」か―』岡田 実(国際学部教授)著

掲載日:2026年07月06日

琉球列島の持続可能な発展と安全保障―「対中抑止のフロンティア」か「平和の緩衝地帯」か―

東アジアの平和と発展に関し、2022年5月に沖縄県が発表した「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」は、SDGsの理念を踏まえ、「平和で生き生きと暮らせる誰一人取り残すことのない優しい社会の形成」「世界とつながり、時代を切り拓く強くしなやかな自立型経済の構築」等の基本的方向性を打ち出し、「平和貢献の地域協力外交の展開や交流ネットワークの形成など、21世紀の"万国津梁"を構築」することを目指す内容となっています。 一方、米中対立が厳しさを増す中、台湾と隣接する琉球列島を取り巻く国際環境は急激に変化しつつあり、同基本計画は多くの課題に直面し、琉球列島の持続可能な発展と安全保障は大きな岐路に立たされています。 本書は、与那国島、宮古島、石垣島、台湾島、金門島、福州、平潭島、北京等などでの現地調査を踏まえ、岐路に立つ琉球列島の持続可能な発展と安全保障の現状とあり方を、矛盾をはらむ「対中抑止のフロンティア」と「平和の緩衝地帯」の二つの方向性を軸に据えて読み解くことを目的とするものです。

目次

序章 沖縄返還・日中国交正常化50年―日中「1972年体制」の変質と琉球列島

第1章 「対中抑止のフロンティア」か「平和の緩衝地帯」か
はじめに
1.「対中抑止のフロンティア」としての琉球列島
2.「平和の緩衝地帯」としての琉球列島
おわりに

第2章 宮古島市長はなぜ腐敗したか?―開発と基地建設をめぐる腐敗と反腐敗
はじめに
1.政策と計画:国境離島の位置付けと変容
2.新基地建設をめぐるアクターと制度:候補地選定と用地取得の特殊性
3.宮古島市長汚職事件の発生
4.再発防止のために何がなされたか?―事件の点検・検証
5.琉球列島の「腐敗」の構造
おわりに

第3章 「黒潮生活経済圏」は実現できるか?―越境地域開発協力と地域外交
はじめに
1.越境地域開発協力の枠組み
2.「黒潮生活経済圏」構想の胎動
3.金門島―福建省(厦門・福州・平潭)を軸とした両岸発展協力
4.「万国津梁」と沖縄県の地域外交
5.「与那国自立ビジョン」再考

第4章 東アジアの越境「ブライトツーリズム」―起源・記憶・発展
はじめに
1.「ニューツーリズム」の諸相と「ダークツーリズム」
2.起源:琉球人はどこから来たのか?
3.記憶:「万国津梁」と「海のシルクロード」
4.発展:中国の発展政策と平潭総合実験区
5.「ブライトツーリズム」のモデル化と実践への課題
おわりに

第5章 岐路に立つ国境離島の持続可能な発展と安全保障―与那国町長選挙をめぐって
はじめに
1.与那国の発展路線の変遷と葛藤
2.2025年与那国町長選挙における争点
3.「無医地区」化と安全保障強化のリンケージ
おわりに

終章 国境離島を「平和と発展のフロンティア」へ転換できるか?

出版社

勁草書房

発行日

2026年7月13日

著者

岡田 実(おかだ みのる)
拓殖大学国際学部教授。2010年、法政大学大学院で博士(政治学)取得。
東北大学法学部卒業後、民間企業、国際協力機構(JICA)、法政大学法学部兼任講師等を経て2014年から現職。拓殖大学国際開発研究所長を歴任(2021-24年度)。
JICAでは北京大学留学、中国事務所員、中国援助調整専門家、中国事務所副所長として約10年間対中政府開発援助(ODA)に従事した他、本部、外務省経済協力局、研究所等で勤務。富山県出身。
著書に『日中関係とODA-対中ODAをめぐる政治外交史入門』(単著、日本僑報社)、『「対外援助国」中国の創成と変容1949-1964』(単著、御茶の水書房)、『ぼくらの村からポリオが消えた―中国・山東省発「科学的現場主義」の国際協力』(単著、佐伯印刷出版事業部)、『日中未来遺産 中国「改革開放」の中の“草の根”日中開発協力の「記憶」』(単著、日本僑報社、拓殖大学研究叢書(社会科学)51)、『現代中国の腐敗と反腐敗 汚職の諸相と土壌』(共著、第10章担当、法政大学出版局)などがある。