平成27年度 拓殖大学学長 入学式告辞

平成27年4月4日
拓殖大学学長 川名明夫

新入生の皆さん!ご入学おめでとうございます。ご列席の保護者、並びにご親族の皆様にも、心からお祝い申し上げます。

本年は拓殖大学にとっても新入生の皆さんにとっても記念すべき年であります。西暦1900年(明治33年)台湾協会学校として創設された本学は、2000年に創立100年を記念し「拓殖大学ルネサンス事業」を立ち上げました。その集大成である文京キャンパスの整備事業が本年1月に完了し、最新の設備を整えた図書館・教室等(E館)が完成しました。いよいよ4月から商学部、政経学部は新しくなった文京キャンパスで、外国語学部、国際学部、工学部はここ八王子国際キャンパスで4年間同一キャンパスでの一貫教育を行うことが可能となりました。新入生の皆さんは、この新しいシステムで学ぶ初めての学生です。これからの4年間同じキャンパスにいる同じ学部の先輩の背中を見ながら学ぶことができるわけです。先輩の背中を見ながら、先輩を追い抜く気概をもって勉学に励んでもらいたいと思います。

西暦1900年に台湾協会学校として創設された拓殖大学は、歴史と伝統のある「国際大学」です。「一人一人が国際的視野を持ち、国内外の人々と協働して積極的に課題の発見と解決にチャレンジしていくタフな人間力を身につけたグローバル人材」の育成が我々の使命だと考えています。このような使命の実現を目指して「拓殖大学教育ルネサンス」を立ち上げ2020年に向け教育改革を始動させ始めたところです。これから、本学の創立120年、そして東京オリンピック開催の年である2020年にむけて本学の教学面における改革を積極的に進めていきたいと考えています。

さて、新入生の皆さん!皆さんの持っている大きな財産は「若さ」です。「若さ」は可能性といってよいかもしれません。大学での4年間、失敗を恐れず果敢に自分の夢にチャレンジしてみてください。夢にたどり着くために必要な知識、能力、技能の習得に対して大学は全力で支援します。若い皆さんは、自分で気づかない能力や才能を持っています。それを引き出し、伸ばすことが私たち大学人の役割です。そして、皆さんの持つ若い力は、少子高齢化が急速に進む日本社会から大きな期待を寄せられています。この期待に応えられるよう、この4年間大いに頑張ってください。

ここで少し皆さんの大学における学びについて話をさせてください。

最近の情報通信技術の進展には目覚ましいものがあります。10年前には携帯電話さえ珍しかったものが、最近では携帯電話はガラ系と言われ、スマートフォンいわゆるスマフォが主力となってしまいました。更に、インターネットが普及しスマートフォンやパーソナルコンピュータを使って、何処にいても、何時でも自分の欲しい情報を手に入れることができるようになってきました。このような世の中の進展は学びの中にも大きな影響を与えています。私たちが学んだ大学(おそらく皆さんのご両親よりもう少し古い時代ですが)では、先生が教壇に立ち、黒板にその日の講義の内容を書いては消し、書いては消し、学生は懸命にノートを取りといった風景が普通でした。しかし、ノートにいっぱい書き写されたデータは、知識と言ってもよいですが、今やUSBメモリーのほんの一部に収まってしまいます。また、必要なデータはインターネットを使うと、何処にいても、何時でも見ることができます。そこで重要なのは、このデータを如何に使うかということです。沢山のデータを机の上においておいても、何の役にも立ちません。そのデータをどのように処理し、並べ替えて見て、新しいものを見つけ出すかということが重要です。そのためには、その人の知識の運用力が問われるのです。大学で学ぶことの重要性はここにあると思います。知識を詰め込むのではなく、その知識をどのように使うかを学んでほしいのです。この様な学びは皆さんが主体的に取り組むことが重要です。自分で考えなくては誰も考えてはくれません。コンピュータやスマートフォンはデータや情報を集めるための道具です。決して皆さんのために何かを考えてくれるわけではありません。是非この点は肝に銘じておいてほしいと思います。

先日新聞で面白い記事を見つけました。最近のコンピュータ技術の進展は目覚ましく、人間と変わらないような機能を持つようになってきています。場合によっては人間以上の機能を発揮します。コンピュータができて以来「何時になったら人間の脳と同じような機能を持つようになるのだろう?その時いったい人間とコンピュータとの関係はどうなるのだろう」と多くの人が考えました。SF映画の中ではコンピュータが人間を操るような場面も出てきていましたが、多くの人が人間の脳を超えるようなことはないと考えていました。

しかし、最近ネットのニュースの中にギョとするような記事を見つけ出しました。コンピュータのワトソン君が銀行に採用という記事です。日本の銀行にワトソン君という外国人が採用されても驚かないのですが、ワトソン君というコンピュータが採用されたのです。「コンピュータが導入された」と書けばよいところを、「ワトソン君が採用された」と書いているのです。これは人の代わりにコンピュータを採用したという事ですから、人間がやることをコンピュータが肩代わりできるようになったということです。ワトソン君の採用された部署は案内係です。これまで、銀行にかかってくるいろいろな問い合わせに対する案内は、人がやっていました。外からの問い合わせはどんなことが来るかわかりません。人間であればそれ相応の答えをすることができるのですが、今までのコンピュータではそれが難しかったのです。しかし、先ほど申し上げましたように、コンピュータの進歩により、それが可能となってきたのです。従って、マニュアル通りに案内するような仕事は、その速度から言っても人間はかないませんから、そういった仕事はコンピュータにとってかわられてしまいます。

最近のニュースでもうひとつ面白いニュースがありました。将棋の好きな方はご存じだと思いますが、ここ何年かプロの棋士、将棋を指す人のことですが、とコンピュータとの勝負が毎年行われています。最近ではプロの棋士とコンピュータとの勝敗は五分五分であったと思います。

先日、プロの棋士が面白い手でコンピュータに勝ったという記事がネット上にありました。将棋では相手の陣地に入ると駒をひっくり返してより強力な成り駒とすることができます。特に強力な駒である角や飛車では必ずと言ってよいほど相手の陣内に入ると、成り駒とします。先日の試合では、プロの棋士が角が相手の陣内に入ったにもかかわらず成り駒としませんでした。ここでコンピュータが考え込んでしまい、次の手を打つことができずコンピュータの負けとなったのです。何故コンピュータが次の手を打てなかったかというと、通常角が自分の陣地に入ってくると成り駒となるので、コンピュータを動かすプログラムを作るときに、成り駒にならない場合のプログラムを作っていなかったのです。なるべく、簡単なプログラムとするために、当たり前と考えられている部分は省略してしまったのです。

ここにコンピュータの限界があります。人間がプログラムしていないことはできないのです。皆さんもこれから大学で学ぶわけですが、マニュアルに書いてある通りしか動けない人間になっては困ります。マニュアルに書いていないことであっても自分が持っている知識をフル動員して何とか答えを出すことができるということが必要です。この力を是非大学の4年間で身につけてください。

よく、「解るという事は変わるという事」だといわれます。皆さんもこの4年間拓殖大学で多くのことを学んでください。そしてその学びが身についた暁にはきっと皆さんは、前の自分とは変わっているはずです。是非自分で考え答えを導き出すことの楽しさを実感し、色々なことを学んで身につけることにより自分が変わったといえるようになってください。

最後に、ご列席いただいている保護者ならびにご親族の皆様に申しあげます。どうぞ本学の教育方針とその取り組みにご理解頂きたく、よろしくお願いいたします。そして、皆様と拓殖大学とで将来ある若者の成長にかかわっていこうではありませんか。

新入生の皆さん、並びにご列席の保護者並びにご親族の皆さまに、重ねて心よりご入学のお祝いを申し上げ告示と致します。