平成31年度 拓殖大学学長 入学式告辞

平成29年度 拓殖大学学長 入学式告辞

平成31年4月4日
拓殖大学学長 川名 明夫

平成の時代が終わり、新たな時代を迎えるこの節目の年に、本学に入学された新入生の皆さん!ご入学おめでとうございます。ご列席の保護者、並びにご親族の皆様にも、心からお祝い申し上げます。

拓殖大学は、アジアに、そして世界に貢献する真のグローバル人材の育成を建学の理念として、西暦1900年(明治33年)に、桂太郎公爵により設立された、歴史と伝統のある国際大学です。

その長い歴史を通して、海外に赴き、現地の人と一緒になって汗水を流し、その地になくてはならない人との評価を受けた卒業生を数多く輩出しています。そして、その伝統は今日の拓殖大学にも連綿として引き継がれています。拓殖大学に入学した皆さんは、是非一度は拓殖大学の歴史に触れてみてください。そして、このような歴史と伝統を持つ本学において学ぶことに、誇りと自信を持ってください。

現在、創立120周年にあたる2020年に向けて「学生一人一人が国際的視野を持ち、国内外の人々と協働して積極的に課題の発見と解決にチャレンジしていくタフな人間力を身につけたグローバル人材(拓殖人材)」の育成を目標とする「拓殖大学教育ルネサンス」を立ち上げ、教育改革を進め、多くの実績をあげて来た所です。これから、本学の創立120周年、そして東京オリンピック・パラリンピック開催の年である2020年にむけて本学の教学面における改革を積極的に進めるとともに、これまでの実績の上に立ち、新たな飛躍を目指したプロジェクトを立ち上げようと、教職員一丸となって取り組んでいるところです。新入生の皆さんも是非この仲間に加わり、自分自身とそして大学が大きく成長するところを身をもって体験してみてください。

教育ルネサンスでは、『拓殖人材』の育成を目指し、「英語力の強化・向上」「実践的な職業教育の充実」「ゼミナール教育の充実と強化」などに取り組んでいます。教育ルネサンスを実現するためのプロジェクトである2020 TAKUSHOKU NEW ORANGE PROJECTでは国際交流、スポーツ振興や地域の防災などを学生と教職員が協働して推進する「2020広報プロジェクトチーム」の活躍で多くの成果を上げています。

昨年度は、学生の皆さんが国内外の地域に出て、地域の中で学びができるよう「地域連携センター」を立ち上げました。本センターを中心に他大学や企業および自治体と協定の締結を推進し、国内だけでなくアジアから世界への展開も活発に進めています。

現在、国連が2030年までに達成を目指している「持続可能な開発目標(SDGs)」は「地球上のだれ一人取り残さない」という基本理念のもと、多様性と包摂性のある社会の実現を目指すものです。この目標は、本学の建学の理念とも合致し、「教育ルネサンス2020」において目指す『拓殖人材』は、このようなSDGs達成に向け国際社会の中で大いに貢献してくれるものと信じています。

さて、皆さんを取り巻く日本の社会は大きな転換期に立たされています。グローバル化そして新興国の勃興のうねりは日本の国際社会における存在感を低下させ、少子高齢化社会の到来は、日本の生産力を支える生産人口の急激な減少をもたらし、日本の経済の先行きを不透明なものとしています。さらに、それに追い打ちをかけるように最近の技術の進展は、これからの日本だけではなく世界全体の将来を予測不能なものとしています。

最近、超スマート社会(Society5.0)といった言葉を耳にすることが多くなりました。超スマート社会というのは、現在日本が目指す社会であり、AI、すなわち人工知能やIoT、モノとモノをインターネットでつなぐ技術などを発展させ、誰もが活躍でき、いま述べたような様々な社会問題を解決できる、持続可能なインクルーシブな経済社会システムのことです。このような社会では、これまでのモノを中心に動いていた経済が、情報を中心に動くような経済に変わっていきます。例えば、自動車の世界では最近、Connected Carという言葉を耳にします。これは、車が常時ネットワークにつながりIoTの端末となることを意味しています。これによって車の位置情報、車の状態、運転の状態等いろいろな車に関する情報がネットワーク上で共有され、いわゆるビッグデータ呼ばれる大量のデータ、即ち情報がコンピュータ上に集まります。この情報をAIが解析することにより、今運転している車の保守がいつ必要なのか、このような運転をする人の保険金はいくらにするのが妥当なのか等、様々な情報が新たに生まれてきます。このような情報は、車を製造しているメーカー以外の多くの企業でも活用が可能であり、データが売買される市場まで形成されるようになってきています。

これ以外にも多くのモノがネットワークにつながり、様々な大量のデータがコンピュータ上に集積されることにより、このデータを使った新たな種類のビジネスが現れてきます。確かにこれまで言われている様に、AIの進展によりなくなる職業も出てくるでしょうが、このような新しいビジネスも現れ、これまでになかった新たな職業が生まれてくるものと思います。

AIにより仕事が奪われるというのは、一面的な見方であると思います。それではこの様に変化していく社会で活躍するためには大学で何を学べばよいのだろか?きっと皆さんは今、こんな疑問を胸に抱いているのではないかと思います。

このような情報を中心として動く新しい社会で活躍するために重要なことは、既存の概念にとらわれず自由な発想で物事にあたることではないかと思います。柔軟な思考ができる頭脳が重要です。情報という概念を入れることにより今まで考えられなかったようなビジネスが生まれたり、アイデアが生まれてくるでしょう。車は単に人間やモノを移動さるためだけの道具だと考えていては、先ほどお話したConnected Carといった発想は出てきません。柔軟な思考と同時に必要なのは今までにないことにも怖気づくことなく、積極的に新しいことにチャレンジする精神です。独りよがりにならずに、周りの人の意見も聞きながら考え抜き、新しいことに積極的に取り組んでいく、そして粘り強く目的に向かって進んで行ってください。

柔軟な思考、チャレンジ精神、考え抜く力、新入生の皆さんに大学で学ぶ4年間で身に付けてほしい事です。

先程もお話ししたように、本学では昨年から地域連携センターを設置し、国内外の地域の方々との連携を図り、地域の振興、創成のお手伝いをしています。それと同時に地域を学生の皆さんの学びの場としても使わせていただいています。教室の授業だけでは学ぶことのできない多くのことを地域に出て活動することにより学ぶことができます。地域の振興、創生といっても、簡単なものではありません。皆さんが考えていることと、地域の皆さんの考えが同じということはほとんどあり得ません。その中で、一生懸命考え、地域の皆さんと話をし、地域の皆さんと協力して新しいことにチャレンジするということは、学生の皆さんにとっては新鮮な経験であり得難いものとなっているはずです。また、海外に出かけて新しい経験をするということは、柔軟な思考力、チャレンジ精神を育む上で、この上とない機会です。大学に在学する4年の間に是非海外に出て新しい経験を積んでみてください。

これからの情報が中心となる社会は、世界中がネットで繋がったボーダレスな社会です。皆さんが社会に出て活躍しようとする時、競争相手になるのは決して日本人だけではありません。世界中の若者が皆さんの競争相手です。世界の中で競っていくのだということを常に意識しながら、これからの4年間を過ごしてください。

新入生の皆さん!皆さんの目の前には可能性が大きく広がっています。この4年間是非この可能性を伸ばしていってください。拓殖大学は教職員一丸となって皆さんを応援致します。

新入生の皆さん、並びにご列席の保護者並びにご親族の皆さまに、重ねて心よりご入学のお祝いを申し上げ告示と致します。

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