令和3年度 拓殖大学学長 入学式告辞

令和3年度 拓殖大学学長 入学式告辞

令和3年4月5日
拓殖大学学長 鈴木 昭一

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。本日、本学キャンパス内にこうして皆さんをお迎えできることを大変嬉しく思います。(また、この映像をご覧頂いている保護者の方々を始めご関係の皆様方に対し、心よりお祝い申し上げます。)

本日皆さんをお迎えする節目にあたり、本学でこれから学生生活を送る上で心がけて欲しいことをお話しします。

一つ目は、皆さんは学問を修めるため、学修するために大学に入学しました。高等学校までに受けた教育を基礎として、その上に立つそれぞれの専門分野について学修していきます。学問というものは、長い時間をかけて先達が築き上げてきた価値ある知的財産といえます。現代に生きる私達には、先達が築き上げたこの知的財産を将来へ引き継ぐ義務があるといえます。そのためにはどうすれば良いのか。

学問を所与のものとしてただ単に表面的に理解するだけでは不十分であり、その本質に至るまで深く理解しなければなりません。そのためには、学問に批判的精神をもって取り組んでください。そうでなければ、本質にたどり着くことは困難であり、ひいては新たな知見を見出すことによって新たな価値を学問に与えることなど難しいでしょう。新たな価値を与えてこそ、学問の発展的な継承であると言えます。

学修にあたっては、主体的に学ぶ姿勢・態度を忘れないでください。先に述べた批判的精神をもって取り組むとは、すなわち主体的に学ぶことに他なりません。まずは、与えられた書物を読んで、また教員の講義を受けて、その内容を理解することから始まるでしょうが、ただ漫然とそれのみに終始するのでは先に述べた本質の理解には至らず、学問の発展には繋がりません。批判的精神をもって取り組めば、自ずと様々な疑問が湧いてくるはずです。その湧いてきた疑問を自ら打ち消すことなく解決へ向けて行動してください。皆さんの中に湧きいずる知的好奇心を大事にしてください。さらに関連する書物を求め、そこに解を探すことも一つですが、まずは教員にその疑問をぶつけてください。教員はその分野の研究者であり専門家です。皆さんに対して、知的好奇心を更にかき立てる良きアドバイスを与えてくれるはずです。

今述べたとおり、教員は授業の中で皆さんにその学問について解き教授する専門家であるわけですが、誤解を恐れずに言えば、皆さんよりも「永く」その分野に携わっている先輩であると言っても良いでしょう。皆さんよりも早くその分野を学び始め、研究に着手し、こんにちまで皆さんよりも長い時間その分野に専心してきたということです。わたくしが言いたいことは、教員は皆さんと同じ方向を向いて、その学問分野の発展のために尽くして行きたいと願っているということです。ですから、遠慮することなく、授業内容についての質問はもちろん、湧いてくる疑問の数々を教員にぶつけ、アドバイスを求めて欲しいと思います。教員とて、学生の皆さんから教えられることも多いのです。このような学生と教員との知的コミュニケーションが本学内において大いに展開されることを願っています。

今述べた学修への取り組みの他、もう一つ大事なことがあります。それが二つ目、心の成長です。心の成長は、年齢の成長と共に豊かな人生体験を積むことで達成されます。この意味では、教室で授業を受けたり、読書したりするだけでなく、友人と交流したり、様々な機会を得て他者と関わることもこの時期とても大切なことになります。他者との触れ合いによって得られることとは、同世代だけでなく、世代を超えて様々な人達と交流して触れることのできる多様な考え方・価値観です。本学には多くの留学生が在籍しています。留学生との交流も大いに行って下さい。国を超えて様々な考え方・価値観があることを知り、それを理解し、受け入れて下さい。そうすることによって、皆さんの内にある考え方の寄って立つところに奥行きと広がりが出来てくるはずです。奥行きと広がりがあると、物事を判断するにあたり、大局的でバランスのとれた判断を可能とします。こうした皆さんの内なる変化は、心の成長と言えます。心の成長と、先に述べた学修とは互いに良い影響を与えます。心の成長は学修にも良い影響を与え、逆もまた真なりです。

本学では「拓殖人材」の育成を教育目標としています。拓殖人材とは、「専門性」「国際性」「人間性」を兼ね備えた人材を言います。「専門性」は先に述べた学修によって養われます。それぞれの学部・研究科における体系的に配置された講義、演習、実習、ゼミナール等を通じて、批判的にすなわち主体的に学修してください。また、単に語学運用能力を磨くだけでなく、留学生との交流や海外体験プログラム等を利用して異文化体験を積み、真のコミュニケーション能力を付け豊かな「国際性」を身につけてください。授業だけでなく課外活動にも積極的に参加して欲しいと思います。本学には麗澤会という学生と教職員が一体となって課外活動を支援する伝統ある組織が存在します。麗澤会には様々な部・サークルが属しています。ボランティア活動も盛んに行われています。学部を超えて学年を超えて友人を作るチャンスです。オレンジプロジェクトという学生と職員が協働するプロジェクトチームも皆さんを待っています。大学祭での活躍も期待しています。学生チャレンジ企画、社会人基礎力育成グランプリなど各種のコンテストに参加する機会もあります。こうした活動を通じて豊かな「人間性」を育み、心の成長に繋げて欲しいと思います。

最後となりますが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、残念ながら未だに収束の兆しが見えません。ワクチン接種の進捗状況は、我が国においてはまだまだであり、変異種の存在も確認されています。今後の情勢はまったく予断を許しません。暫くはウィズコロナの状況で学生生活を送らざるを得ません。私達教職員一同は皆さんの健康・安全を第一に考えつつ、大学で学ぶ喜びをできるだけ味わってもらえるよう様々な対策を講じて、新年度を迎えました。皆さんにも、自分自身はもちろんですが大切な家族、友人、身近な人達を守るためにも基本的な感染防止対策を怠らないようお願いします。

皆さんは大学という新たな環境に身を置くことになりました。特に、留学生にあっては、遠く母国を離れての生活となります。大学生活を送る上で様々な悩みも生じてくることでしょう。本学は、皆さんが、授業や課外活動等に専心できるよう十分にサポートしていきます。しばらくは困難な時期が続きそうですが、不遇であると嘆いても生まれるものは何もありません。困難にあってこそ成長の機会ありです。工夫を重ねながら、少しずつでも前に進んで行きましょう。皆さんが卒業する時に、自分自身の大きな成長を実感することができるよう頑張ってください。私達教職員一同も皆さんの大いなる成長を心から期待しています。

以上をもって、わたくしの告辞といたします。

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