令和5年度 拓殖大学学長 卒業式告辞

令和3年度 拓殖大学学長 入学式告辞

令和6年3月23日
拓殖大学学長 鈴木 昭一

卒業生の皆さん、本日は誠におめでとうございます。保護者の方々を始めご関係の皆様方に対しましても、心よりお祝い申し上げます。皆さんの新たな門出にあたり、私からメッセージを送りたいと思います。

皆さんの大学生活を振り返って、まず、触れるべきは「新型コロナウイルス感染症のパンデミック」でしょう。2020年初頭から世界中を大混乱に陥れました。皆さんは2020年4月入学でしたので、パンデミックの影響により記念すべき入学式は中止とせざるを得ませんでした。科学技術が発達した現代であっても、その後の「感染症」との戦いは困難を極め、多くの犠牲を強いられてきたことは周知のとおりです。そうした犠牲の中には、皆さんの大学生活も含まれていました。昨年5月に感染症法上5類に引き下げられるまでは、私たちは特段の制限を受けてきました。

大学での授業や課外活動が大きな影響を受けることになりました。大学は、皆さんやご家族の生命の安全と、一方で、学修機会の確保、この二つの両立という大変困難な課題を突きつけられ、これまで経験したことのない「オンライン授業」の導入に迫られました。教室内で友人たちと机を並べて授業を受けたり、学生食堂で共に食事を取ったり、部やサークル活動で交流するという当たり前の大学生活が奪われてしまいました。この間、皆さんにとって、対面でのコミュニケーションが不十分であったことは間違いありません。今となってはオンラインという手段には様々なメリットがあることも認知されています。ポスト・コロナとなった今でも社会生活・日常生活で活用されています。しかしながら、対面での直接的なコミュニケーション、すなわち五感を使って行うコミュニケーションには、他では代替できない貴重な価値があることも思い知らされました。

皆さんは、各学部の教育課程で定められた学修要件を満たし、本日「学士」の称号を得ることになりました。皆さんの修めた学問が一定レベル以上に達したということです。ここまで良く努力しました。しかしながら、学問も進化します。したがって、修めた学問の中には、時間の経過とともに陳腐化してしまう内容もあります。皆さんが学んだ学問が将来役に立たないとか、獲得した知識は無駄であったと言いたいのではありません。皆さんは、大学での学びにおいて、学問の最終成果だけでなく、それが生み出されるプロセスをも学んだはずです。学問の形成過程、方法論、あるいは課題解決の手法は、皆さんがこれから携わる仕事だけではなく、歩む人生様々な場面で生きてきます。更にいえば、皆さんの学びはこれで完結ではありません。人生は学びの連続です。学びに終わりはありません。是非とも学びを止めないでください。

皆さんは本日、人生における一つの大きな節目を迎えました。これからの皆さんの長い人生、いろいろなことが待ち受けているでしょう。もちろん幸福な人生が待っていることを心から祈っておりますが、幾多の困難も待ち受けているでしょう。どうか、困難な状況に陥っても挫けず、諦めずにそれを乗り越えるべく努力してください。

人生は、選択という意思決定の連続です。皆さんは、大小様々な選択の場面に立つはずです。皆さんが、何かの分岐点に立ち、そこで選択を迫られたときには、当然ですが、できるかぎり最善の判断を心がけてください。とはいえ、判断にあたっては大いに迷うことでしょう。迷って当然です。ですから、その判断にあたっていろいろな人にアドバイスを求めることがあってももちろん構いません。しかし、最後の決断は、自分自身に責任を持つためにも自分で下してください。そして、いったん向かう方向が定まったら、その選択が正しかったのかどうかに気を取られずに、前を向き、置かれた環境で、決して焦らず、努力を惜しまず、着実に進んでいってください。そこで、皆さん自身ができる限りの努力をしたかどうかが、皆さんの過去のその選択が正しかったかどうかを左右します。先ほど最善の判断を心がけてくださいと言いましたが、判断しなければならない時点での判断が最善であるかどうかは、実は判断を下すときには決まっていないのです。後になって振り返ったときに、あのときの判断はどうであったのか。そのときに「最善な判断であった」と自分で言えるように、置かれた環境で努力し続けてください。選択した後の努力が、心掛けが、行いが、あのときの判断の良否を決定します。

この間のコロナ禍は、皆さんにはコントロールができない事態でした。皆さんが自ら選択した環境ではありません。ですから、コントロールが及ばなかったこのコロナ禍を振り返り、不遇だった時期をいつまでも嘆いてはいけません。そこから得るものは何もありません。制限された困難な環境下で、皆さんそれぞれが頑張ってきた事にのみ目を向けるべきです。その経験を糧に、これから向かう将来、努力し続けてください。数年先、数十年先に、コロナ禍で送った大学生活を振り返り「自分はよく頑張った。よく堪えた。だから今がある。」と言えるように、これから先の人生において、前を向き、焦らず、着実に、努力し続けてください。

世界に目を向けるといまだに戦争や紛争が続いている地域があります。一つ言えることは、文明の進化や社会の高度化に比例して、人間の心が豊かになり、世界に平和が訪れるとは限らないということです。分かってはいましたが、この二つは別の次元のことであるという辛く悲しい現実を突きつけられた思いです。言うまでもなく、戦争は人間の愚かな行為です。過去を紐とけば明らかなように人間は争いを繰り返してきました。では、これからも繰り返されるのでしょうか。 SDGsが叫ばれている今日、戦争のない平和な世界の実現は究極の課題です。皆さんが慣れ親しんだ本学校歌の一節「人種の色と地の境、我が立つ前に差別なし」には「多様性」を受け入れる精神がうたわれています。改めてこの一節をかみしめてください。画一的でともすると狭く偏った価値観に凝り固まることなく、物事を相対化し、広い視野から見る目を持ち続けてください。多様な価値観を受け入れる豊かな心を持ち続けてください。そして、本学で学んだ皆さんにはフロンティア精神が宿っています。自らの道を拓き、逞しく生き抜き、人類の幸福のために突き進んでいってほしいと心から願っています。

本日でみなさんとお別れとなりますが、私たち教職員は皆さんの来校をいつでも歓迎します。これから、皆さんはそれぞれの置かれた環境で忙しく過ごすことになると思いますが、隙間の時間にでも顔を見せにきてください。社会に出て一段と成長した姿がみられることを楽しみにしています。 以上、告辞といたします。

以上

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