令和8年度 拓殖大学学長 入学式告辞

令和8年4月3日 拓殖大学・学長 鈴木昭一
新入生の皆さん、御入学おめでとうございます。
御列席の保護者の皆様を初め、御家族、御関係の皆様にも心よりお祝い申し上げます。
本日ここに希望に満ちた新入生の皆さんを迎えることができましたことを教職員を代表して誠に喜ばしく思います。
皆さんは、それぞれの志を胸に本学の門をくぐられました。大学で何を学びたいか、どのような自分になりたいのか、既に明確な目標を持っている人もいれば、まだ模索の途中にある人もいるでしょう。しかし、そのいずれであっても本日から始まる大学生活は皆さんにとって自らの可能性を広げ、人生の土台を築く極めて大切な時間となります。
大学とは単に知識を身につける場所ではありません。もちろん専門分野について体系的に学び、確かな知識を習得することは大学教育の根幹です。しかし、大学での学びとは既知のことを覚えるだけにとどまらず、なぜそうなのか、本当にそう言えるのか、別の見方はないのかと問い続ける営みでもあります。与えられた答えを受け取るだけでなく、自ら問いを立て、考え、確かめる、その営みこそが大学における学びの本質です。
高校までの学びには一定の正解に到達することが重視される場面が多くあります。しかし、大学では容易に答えの出ない問題に向き合うことが少なくありません。現代社会が抱える課題の多くは単純な正解を持たないからです。
社会の変化は複雑さを増し、経済、政治、文化、科学技術、環境、国際関係など、あらゆる領域が相互に結びついています。こうした時代に求められることは、単なる知識の量ではなく、物事の本質を見極め、多面的に考え、責任ある判断を行う力です。大学での学びはまさにその力を養うためにあります。
大学院に入学される皆さんには、さらに高度な学びが求められます。大学院は専門分野において研究能力を高め、あるいは高度な専門性を必要とする職業に従事するための優れた能力を養う場です。とりわけ博士後期課程に進まれる皆さんには、自立した研究者として学術の発展に寄与することが期待されています。先人の研究成果を十分に踏まえつつ、なおそこに新たな知見を加えようとする真摯な努力を重ねていただきたいと願います。
学問を前へ進める原動力は、知的好奇心です。人はもともとなぜだろう、どうしてだろうと問う力を持っています。しかしながら、成長するにつれて、効率や結果ばかりを求めるうちにその問いをいつしか心の奥に封じてしまうことがあります。しかし、大学において最も大切なのは、その素朴な問いを失わないことです。疑問を持ったらそのままにせず、文献を読み、資料に当たり、教員に尋ね、友人と議論してみてください。その繰り返しが皆さんの思考を深め、学びを真に自分のものにしていきます。
同時に、大学生活は教室の中だけで完結するものではありません。授業、演習、実験、実習、研究活動はもちろん重要ですが、人との出会い、対話、協働、失敗と挑戦の経験もまた皆さんを大きく成長させます。課外活動、ゼミナール、留学、ボランティア、地域連携活動、学内外の様々なプロジェクトに積極的に参加してください。自分とは異なる考え方や背景を持つ人々との交流は、視野を広げ、自らを相対化する契機となります。そして、その経験は将来社会に出たときに必ず皆さんの力となります。
今日私たちを取り巻く社会は、大きな転換点にあります。生成AIを初めとする技術革新は、私たちの生活や仕事の在り方を急速に変えつつあります。大学における学びの場面においても、AIは情報収集、文章作成、翻訳、分析など多方面で活用されるようになりました。そうした技術は使い方によっては学びを豊かにし、研究や実務の可能性を大きく広げるものです。しかし、その一方で、安易な利用は考える力を衰えさせる危険もはらんでいます。大切なのは、便利な道具に使われるのではなく、その特性と限界を理解した上で、主体的かつ倫理的に使いこなすことです。情報の真偽を見抜く力、他者の知的成果を尊重する姿勢、そして、最終的には自らが判断し、責任を負うという覚悟がこれまで以上に重要になっています。
また、日本社会は人口減少と少子高齢化の進行というかつてない課題に直面しています。地域社会の在り方、産業の構造、教育、医療、福祉、そして、国の将来像そのものが問われています。さらに、世界に目を向ければ、国際情勢は依然として不安定であり、各地で紛争や対立が続いています。こうした現実に直面する時代だからこそ、狭い視野に閉じこもることなく世界の動きに目を向け、異なる立場や価値観を理解しようと努める姿勢が不可欠です。
本学は、長い歴史の中で時代の変化に向き合いながら多くの人材を社会へ送り出してきました。そして、今もなお専門性、国際性、人間性を兼ね備えた人材の育成を大切な使命としています。専門性とは、自らの学問分野を深く学び確かな力を身につけることです。国際性とは、単に外国語を話せるということにとどまらず、異なる文化や価値観を理解し、広い視野から物事を考える力です。人間性とは、他者への敬意と思いやりを持ち、社会の一員として誠実に行動できる力です。これら3つは、どれか一つだけで十分というものではなく、互いに結びつきながら皆さんを真に社会に貢献できる人へと育てていくものです。
本学には全国各地、そして海外からも多様な学生が集まっています。その出会いをどうか大切にしていただきたいと思います。大学時代に出会う友人や教員、先輩、後輩との関わりは、知識だけでは得られない学びを与えてくれます。時には考え方の違いに戸惑うこともあるでしょう。しかし、その違いを排除するのではなく、理解しようと努めるところに大学で学ぶ意味があります。
中でも外国人留学生の皆さんは、それぞれの母国の文化や言語、価値観を携えて本学の門をくぐられました。皆さんが日本での学びを通じて視野を広げ、将来それぞれの国や地域の発展に貢献されることを心から期待しています。また、留学生の皆さんと日常的に接することは、日本人学生にとっても異文化への理解を深め、国際的な感覚を養う貴重な機会です。互いの違いを認め、共に学ぶ環境こそが本学の大きな強みの一つです。
新しい環境に身を置くことに不安を感じている人もいると思います。授業についていけるだろうか、友人ができるだろうか、一人暮らしに慣れるだろうか、研究を続けられるだろうか、そのような不安を抱くことは決して特別なことではありません。むしろ新たな一歩を踏み出そうとする人にとっては自然なことです。本学には、皆さんの学習や学生生活を支えるための様々な支援体制があります。困ったときには一人で抱え込まず、遠慮なく相談してください。支えてくれる教職員や仲間がここにはいます。
どうか皆さんにはこの拓殖大学での時間を大切に過ごしていただきたいと思います。失敗を恐れずに挑戦すること、安易に結論を急がず考え抜くこと、自分とは異なる他者に敬意を払うこと、そして、学ぶことの喜びを忘れないこと、その一つ一つが皆さんを成長へと導きます。
大学生活は長い人生の中で見れば限られた時間ではありますが、その密度は極めて濃く、皆さんの将来を大きく左右するものです。本日ここに集まった皆さんがそれぞれの志を育み、知性を磨き、人間として大きく成長し、数年後に自信と誇りを持ってこの学び舎を巣立っていかれることを心から願っています。私たち教職員一同、皆さんの挑戦と成長を力強く支えてまいります。
改めて新入生の皆さん、御入学誠におめでとうございます。
以上をもって告辞といたします。




