平成30年度 拓殖大学学長 卒業式告辞

平成28年度 卒業式祝辞

平成31年3月23日
拓殖大学学長 川名 明夫

本日、ここにめでたく拓殖大学を卒業されることとなった皆さん、おめでとうございます。また、ご臨席の保護者の皆様並びに関係者の方々にも心からお祝い申し上げます。

さて、本年卒業を迎える皆さんの多くは、拓殖大学ルネサンス事業の1つとして2005年に始まった文京キャンパス再開発整備事業が終了し、文京キャンパスが生まれ変わった年に入学してきました。

文京キャンパスの再開発が終了するまでは、全ての学部の一、二年生の皆さんは、ここ八王子国際キャンパスで学んでいたのですが、皆さんが入学した年以降は、商学部、政経学部の皆さんは文京キャンパス、外国語学部、工学部、国際学部の皆さんは、ここ八王子国際キャンパスで4年間を過ごすという新しい4年間同一キャンパスで学ぶというシステムとなりました。

このため、ここ八王子キャンパスで開催されていた皆さんにとっての一大イベントであった紅陵祭がその発祥の地である文京キャンパスで開催されることになりました。一方、この八王子国際キャンパスでは、スポーツ施設も整い、留学生の数も多いことから、新たにスポーツフェスティバル、国際フェスティバルが開催されることとなるなど、学生の皆さんの生活にも大きな変化がありました。

また、このような校舎、設備といったハード面の整備が終了したことから、教育に関するソフトの面からも拓殖大学を改革することを目的に、皆さんの入学した年に、世界的な視野に立って国内外の人々と協働して積極的に問題の解決にチャレンジするグローバル人材、拓殖人材の育成を教育目標とした「拓殖大学教育ルネサンス2020グランドデザイン」が策定されました。このグランドデザインに沿って、本学の創立120周年、東京オリンピック・パラリンピックの開催される年でもある2020年、つまり、来年に向けて、国際性、専門性、人間性を備えた人材の育成を目指した教育改革がスタートしました。

皆さんは、ちょうどこの教育改革がスタートしたときに入学してきたわけです。この4年間、本学における学びを通して改革の熱気を感じてもらえたのではないかと思います。そして、それぞれの皆さんによって程度の差はあるとは思いますが、今述べた国際性、専門性、人間性といった3つの力を身につけていただけたものと確信しています。多くの皆さんは、きょう本学から新しい社会へと旅立っていくことになるわけです。ぜひ、本学で学び、身につけたこれらの力を信じ、新しい環境の中で存分に活躍していってほしいと思います。

しかし、皆さんがこれから進もうとしている日本の社会は、現在大きな転換期を迎えています。グローバル化・多極化による国際社会における我が国の存在感の低下、少子高齢化社会を迎え、生産活動の中核となるべき生産年齢人口の激減など、多くの要因が日本の未来を不透明なものとしています。それに加えて、急速な技術革新が未来の予測をさらに困難なものとしています。
特に、技術革新の速度と技術革新が社会全体に及ぼす影響の大きさは目を見張るものがあります。例えばAI(人工知能)についていえば、皆さんが入学したころのAIの能力は、ようやく将棋でプロの棋士と互角に勝負ができるといった程度でした。時には、人間がプログラムをつくるときに、うっかりしてプログラムの一部を書き忘れたために負けてしまう、そういったことさえあったわけです。しかし、現在のAIは非常に進化を遂げて、将棋の世界ではプロの棋士でさえ及ばない強さを発揮しています。

そして、そのころ、10年先には何とかプロの棋士に勝てるようになるのではないかといわれた囲碁の世界でも、既に2年前に世界一といわれる棋士に勝つまでになっています。そして、AIがみずから学習して強くなっていくことができるようになったため、人間の単純なプログラムミスにより負けるようなことはなくなってしまったのです。このため、AIの応用範囲はますます広がり、多くの分野で使われるようになっています。

このようなAI、ビッグデータ、IoT、モノとモノのインターネット、ロボティクスなどの先端技術を高度化して産業や社会生活に取り入れ、日本の強みとリソースを最大限に活用して、誰もが活躍でき、さまざまな社会課題を解決できる日本ならではの持続可能でインクルーシブな経済社会システムである「ソサエティー5.0」(超スマート社会)、こういったものの実現に向けた取り組みが加速しています。また、世界各国でも日本と同様、急速にこれまでの資本集約型、労働集約型経済から、情報や知識を経済を動かすような知識集約型経済への移行が進んでいます。

このような知識集約型経済を中心とする社会を牽引していくためには、これまで以上に知の生産、価値創造を先導する高度な人材が必要とされます。皆さんが本学で学んで身につけた専門性、国際性を生かして、このような社会の実現に貢献していっていただきたいと思います。しかし、先ほど申し上げたように、技術革新の速度は急激であり、社会に及ぼす影響も大きいことから、常に新しい知識を学ぶとともに、その変化に対応できるような柔軟性をいつまでも忘れないでいてほしいと思います。

専門性にかかわる専門知識の量や質、国際性にかかわる語学力といった部分に関しては、AIはその力を遺憾なく発揮し、私たちを助けてくれるでしょう。しかし、グローバル化が進み、AIやIoTの技術が進展していく中で、多様な人々と協力しながら仕事を進めていくことが必要になったとき、一番重要なのは人間性であり、この部分に関してはAIで補うことはできません。多様な人と協力し、仕事を進めるためには、どのような困難であってもそれを乗り越え前進していくとともに、他の人への思いやりを決して忘れないというタフな人間力が必要です。

皆さんは、この4年間、拓殖大学でいわゆる学問を学んだだけではなく、課外活動やボランティア活動などを通して、多くの先輩、友人とともに活動し、タフな人間力を身につけたことと思います。拓殖大学の学びで身につけた国際性、専門性、人間性に自信と誇りをもち、この予測不可能といわれている未来に向かってみずからの道を切り開いていってほしいと思います。

皆様のこれからの活躍を期待し、私の告辞といたします。

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