令和2年度 拓殖大学学長 卒業式告辞

令和2年度 拓殖大学学長 卒業式告辞

令和3年3月23日
拓殖大学学長 川名 明夫

本日ここに卒業式を迎えた皆さん、おめでとうございます。このようなコロナ禍での卒業式という事から、この会場にいる皆様以外には映像を通してのお祝いの言葉となりますが、皆様の安全と感染拡大を防ぐという社会的責任からの事とご理解いただきたいと思います。また、ご両親はじめ保護者の皆様、関係者の皆様にも、映像を通してではありますが心よりお祝い申し上げます。

さて、昨年の1月に国内で初めての新型コロナウイルス感染者が確認されてから早1年以上が経過していますが、その感染拡大は第2波、第3波と引き続き、いまだその収束の見通しは立っていません。最近では、日本においてもワクチンの接種が始まり、首都圏での緊急事態宣言も解除され、明るい兆しが見えてきたものの新たに変異種の感染拡大が報告されるなどその先行きは予断を許しません。しかし、昨年は、感染の急速な拡大により中止となった卒業式を、本日ここに例年とは異なる形式とはなりますが、挙行できたことは喜びに堪えません。

さて、大学はこの一年新型コロナウイルスに翻弄されてきました。ここにおられる卒業生の皆さんにとっても、本当にご苦労の多かった一年ではなかったかと思います。大学生活仕上げのこの一年、ほとんど大学に登校することなく、多くの友人たちと肩を並べて学ぶこともできず、クラブやサークルで同級生、下級生と一緒になって活動することもできなかったことはさぞ残念な事であったと思います。コロナウイルスの為とは言え、本当に申し訳なく思っています。また、就職活動においてもコロナの影響で目指した会社の募集がなくなったり、慣れないweb面接に戸惑ったり大変苦労されたことと思います。本当にご苦労様でした。

さて、皆さんが今日このようなコロナ禍の中でも無事に卒業式を迎えることができたのは、皆さん自身の努力の賜物であることは勿論言うまでもありません。このキャンパスで学び、考えることにより成長してきた皆さんは、ご両親、保護者や先生方の温かい目に見守られ、今日を迎えることができたのだと思います。皆さんを支えてくださった人々がいたことを忘れずに、そしてその方々に対する感謝の気持ちを、卒業した後も是非忘れずにいてほしいと思います。

皆様もご承知の通り、本学は今年創立120周年を迎え、昨年の11月にはコロナ禍の中、ささやかではありますが厳粛に創立120周年の記念の式典を開催させていただきました。同時に今年度は、『世界的な視野に立って、国内外の人々と協働して積極的に課題の解決にチャレンジするグローバル人材(拓殖人材)の育成』を教育目標とした『拓殖大学教育ルネサンス2020グランドデザイン』の仕上げの年に当たっています。このグランドデザインの下「国際性」「専門性」「人間性」を備えた人材の育成を目指した教育改革を進め、学生の皆さんの協力もあり、ほぼその目標を達成することができました。このような改革の進む大学の中で4年間学び、今日ここに卒業される皆さんには、「国際性」「専門性」「人間性」といった3つの力をしっかりと身に着けていただけたものと確信しています。多くの皆さんは、今日、本学から新しい社会へと旅立っていくことになるわけですが、ぜひ本学で身に付けたこれらの力を信じ、新しい環境の中で存分に活躍していってほしいと思います。

しかし、皆さんがこれから進もうとしている日本の社会は、現在大きな転換期を迎えています。グローバル化・多極化による国際社会における我が国の存在感の低下、少子高齢化社会を向かえ、生産活動の中核となるべき生産年齢人口の激減、など、多くの要因が日本の未来を不透明なものとしています。それに加えて、今回のコロナウイルス感染症にみられるようなパンデミックの発生、急速な技術革新等が更に未来の予測を困難なものとしています。

さて、このような予測が困難な将来に向け、現在日本ではAI(人工知能)、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)、ロボティクスなどの先端技術を高度化して産業や社会生活に取り入れ、日本の強みとリソースを最大限活用し、誰もが活躍でき、様々な社会課題を解決できる、日本ならではの持続可能でインクルーシブな経済社会システムであるSociety5.0(「超スマート社会」)の実現に向けた取り組みが加速しています。また、世界各国でも日本と同様、急速にこれまでの資本集約型・労働集約型経済から情報や知識が経済を動かすような知識集約型経済への移行が進んでいます。このような知識集約型経済を中心とする社会を牽引していくためには、これまで以上に知の生産、価値創造を先導する高度な人材が必要とされます。皆さんが本学で学んで身に付けた「専門性」「国際性」を生かしてこのような社会の実現に貢献していっていただきたいと思います。また、技術革新の速度は急速であり社会に及ぼす影響も大きい事から、常に新しい知識を学ぶとともにその変化に対応できるような柔軟性をいつまでも失わないでいてください。

これから先、グローバル化が進み、AIやIoTの技術が進展し、これ迄人が行ってきた単純な作業の多くがAIなどに置き換わっていく中で、皆さんは多様な価値観を持った人々と協力しながら仕事を進めていかなくてはなりません。その際に必要なことは、多様な価値観を受け入れることが出来る寛容性を持つと共に自ら主体的にもの事を考え、お互いを尊重し、お互いが協力して行動出来ることです。このような豊かな人間力は教室の中の授業だけではなかなか身に付ける事は出来ません。

皆さんは、この4年間と言っても最後の一年間はこのコロナ禍のため、ほとんどがオンラインとなってしまいましたが、拓殖大学でいわゆる学問を学んだだけではなく、課外活動やボランティア活動などを通して多くの先輩、友人と共に活動し、豊かな人間力を身につけたことと思います。特に、この一年コロナに負けることなく学び続けてきたことは、皆さんにとって大きな自信となったことと思います。このような拓殖大学の学びで身に付けた、「国際性」「専門性」「人間性」に自信と誇りを持ち、この予測不可能と言われている未来に向かって自らの道を切り開いていってほしいと思います。

さて、卒業式を迎えた皆さん、いよいよこの思いで多きキャンパスから旅立つときが来ました。拓殖大学はいつまでも皆さんの母校であり、応援団です。困ったときには何時でも来てください。拓殖大学の人の繋がりがきっと皆さんの困ったことを解決してくれることと思います。皆さんのこれからの活躍を期待し私の告示といたします

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